うまく育てると愛に進化するらしい

「待ちなよ!」

静雄と臨也の足の速さはあまり変わらない。体格のせいか、やや静雄に分がある。
けれども、臨也はそれを補う情報を持っている。
路地裏で静雄を追い詰めると、臨也は小さくため息を吐いた。
愛の告白をするには、あまりにも淋しい場所だ。

「聞いてたんでしょ?何で逃げるの?」

けれども、自分たちにはぴったりだ、と臨也は思って内心笑いながらまっすぐ静雄を見つめる。
いつもは強い目で睨み付けてくる静雄だが、今は視線を合わせないようにしているらしく、目が合うことがない。
らしくない。そんな静雄を臨也は知らない。

「ねえシズちゃん、俺はシズちゃんが――」
「今更何だってんだよ!」
「シズちゃん?」

言葉を遮り、静雄が叫ぶように言う。怒鳴り声とは違う、と思ったのは、臨也の気のせいかもしれないけれど。

「俺は手前が大っ嫌いだ。手前だって何度も殺そうとしてきたじゃねぇか」
「うん、そうだね」
「これまでも、これからもそうだ。なのに何だって……」

静雄は混乱している。
まさか、臨也に好意を持たれているとは、思っても見なかったのだろう。
臨也だって、計算外だった。

「好きなんだ。気付いたらもう、好きになってたんだ」

いつもみたいにひねっては、静雄には伝わらない。
臨也はありのままを言葉にした。

「どうかしてるって思ったよ。でも、消えなかった。どんどん増えていった。好きなんだ、君が……シズちゃんが」

静雄はどんな顔をするだろう。思って臨也は小さく笑う。
でもきっと、悪い返事ではないだろうと確信していた。あの日、顔を赤くした静雄を見たそのときから。

「好きだよ、シズちゃん」
「何度も言うな、馬鹿だろ、手前……」
「うん、馬鹿でいいよ」
「好きとか、絶対に言わねぇ!」

顔を真っ赤にした静雄が臨也を見つめる。
それだけで、返事なんて分かってしまった。

「じゃあ、これからもよろしくってことで」
「……しね」

これからも終わることのない恋を続けよう。
そう言って臨也は笑った。作り物でない、本物の笑顔で。


恋ってやつは――うまく育てると愛に進化するらしい


おわり


'10.12.08〜 七草


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