お金では買えないらしい

初恋だ。きっとこれは。
臨也は静雄に抱いた気持ちを、持て余していた。
何しろ、人間という種を愛している臨也だが、個を愛したことがなかった。

「で、今日は一体どうしたの?君が連絡もなしに来るなんて珍しい」

20年の想いを成就させた友人を思い出し、電撃訪問した、というわけだ。

「相談、かな」
「臨也が、僕に?君の方が僕よりもずっと色々知っているだろう?」
「……初めてだからちょっと戸惑ってるんだ」

臨也の言葉に、新羅は首を傾げた。
何しろ、本当に初めてのことなのだ。
恋をするのも、そのせいで何も手がつかないのも。誰かに相談するのも。
臨也の目を、新羅はまっすぐ見ていた。

「恋でもしちゃったのかな。なーんて――」
「そんなところだよ。ねえ新羅、惚れ薬とかない?あったら譲ってよ。いくらでも出すから」
「惚れ薬とは、君にしては随分おかしなこと言うね」

くすくすと新羅が笑う。
臨也はため息を吐きそうになった。
惚れ薬でもなければ、きっと臨也の想いが成就するなんてこと、天地がひっくり返ったってあり得ない。

「まあ、あいつが相手ならそう考えるのも無理はないかもね」
「あいつ、って……」
「静雄だろう?君、ようやく自覚したんだね。あ、ちなみに静雄相手なら惚れ薬なんてつまらないものなんて効かないんじゃないかな」

わざとらしく首を傾げる新羅を見て、臨也は今度こそ深いため息を吐いた。


恋ってやつは――お金では買えないらしい。


つづく


お題元:(C)確かに恋だった


'10.09.11〜09.27 七草


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