ウイルスパニック(3000hitキリリク)

※Psychedelic Days設定なサイ津+子静


コンピューターにとって、ウイルスは深刻な問題だ。
情報屋である臨也は特に気を付けていた。
自身のパソコンにはさほど重要な情報は残していないものの、ネットワークに繋げなくなれば業務にも趣味にも支障をきたすのだ。

しかし臨也は、ウイルスの侵入を許してしまっていた。

「うわ……子静、耳が生えてるよ!」
「みみ?」

驚きの声を上げたのはサイケだった。
子静の頭に生えた、真っ白な耳を見て目を丸くしている。
ぴん、と伸びたその耳は、ウサギの耳だ。つい昨日までそんなものは生えていなかったはずだ。

「サイケも耳、黒猫と同じ。可愛い」
「津軽は柴犬っぽい耳が生えてるよ……」
「みみ!」

津軽は不思議そうに首を傾げ、子静は嬉しそうに自分の耳と津軽の耳に触れている。
その光景は確かに愛らしい。津軽に想いを寄せているサイケとしては、非常においしい。
しかし、これは異常事態だ。喜ぶべきではない。

「マスターの仕業かな?」
「マスター、動物好き?」
「こしず、どうぶつみたい!」

うーん、とサイケは考えるポーズをとる。
どう考えてもこれは異常だ。プログラム自体が書き換えられているとしか考えられない。
しかしサイケは、このところ臨也がプログラムに手を加えていないことを知っていた。臨也ではない。だとしたら、誰なのだろうか。

「子静、尻尾も可愛い」
「つがるの、ふわふわしっぽも、かわいい!」

そんなサイケの考えなど知るはずもなく、津軽と子静は楽しそうにお互いの尻尾に触れている。無邪気なものだ。

「……マスターに聞いてみないとね」

特別問題があるわけじゃないけれど、どうにもサイケは落ち着かない。
パシパシ、とサイケの尻尾が床を叩く。

「サイケ、大丈夫?」
「え?」

そんなサイケに気付いたのは津軽だった。津軽は心配そうにサイケの顔を覗き込む。

「ありがとう、津軽。大丈夫だよ」
「でもサイケ、苛々してるだろ?」
「落ち着かないだけだよ。後でマスターに聞いてみようか」

サイケが笑ってそう言うと、津軽もにこりと微笑んだ。
犬耳と犬尻尾のオプションに、サイケはドキリとしてしまった。
このところ、サイケはおかしいのだ。津軽を見るとドキドキして落ち着かなくなる。

「さいけ、しっぽかわいい」
「え?子静の尻尾も可愛いよ」

似た顔をしていても、子静には対してこんな気持ちにはならない。所謂、“恋心”というものだろう。
つい、と津軽の指先がサイケの耳に触れる。

「黒猫、可愛いな。サイケに似合ってる」

このところ、静雄が遊びに来るせいか、津軽はどんどん喋るのがうまくなっていく。
サイケも津軽の耳に触れた。ふわふわとした毛は、サイケにとって初めての感覚だ。
それは津軽も同じだったのかもしれない。
恐る恐るといった手つきでサイケの尻尾に触れる。

「……津軽の耳も尻尾も、良く似合ってて可愛いよ」
「ん、ありがとう」

可愛いな、とまたサイケは思う。そんな二人を見て、子静がこてんと首を傾げた。
しかし、覚えのある声が聞こえると、そちらへぴょん、と飛んで行った。まるで本物の兎のようだ。
サイケがくすりと笑うと、津軽も同じこと思ったのか、ふわりと笑っていた。

「ただいま、って子静……その耳どうしたの?」
「うさぎのみみ!しっぽも」
「サイケと津軽も?どういうこと?」

臨也は子静の姿を見たあと、サイケと津軽を続けて見る。
やはりサイケの思った通り、臨也の仕業ではなかったようだ。

「さっき起きたらこうなってたんだよ。多分、俺たちがスリープ状態のときにプログラムを書き換えられたんじゃないかな?」
「ウイルス、かもしれない」

津軽の言葉に、サイケはこくりと頷いた。

「ああ、なるほどね……明日の朝には元に戻るようにしておくよ。いや、とりあえずスクショはしておくか」
「うさぎ、おしまい?」
「気に入ったの? 」
「ふわふわでかわいい!」

ほっとしたのはサイケばかりで、子静も津軽もどことなく残念そうだ。
臨也は困ったように笑う。
今は半獣化という形以外問題が起こってないけれど、ウイルスの侵入を許した、となれば問題だ。プログラムを書き換えるようなウイルスなら、なおさら。
三人のデータが飛ぶなんて、臨也自身も望まない。

「今度別でプログラムを組んでおくから、とりあえず今日は戻すよ」
「はーい」

ぴょこん、と子静の耳が揺れる。それを見て臨也はやわらかな笑みを浮かべていた。
それはサイケと津軽も同じで、兎のようにぴょんぴょんと跳ねる子静を見る。

「サイケも良いよね?」
「え?」
「残念だったかと思ってね。本当に、お前は俺に似てるよねぇ」

サイケは臨也の言葉に首を傾げる。どういうことなのか分からなかった。
確かに、少し残念に思うところもあるけれど、臨也に含みのある言い方をされるような、そんなやましい気持ちはないつもりだ。
津軽の姿にドキドキしてしまったのは確かだけれど。

「一旦落とすよ。また明日ね」
「はーい」
「お休みなさい」
「おやすみ、マスター」

フォルダに戻りながら、サイケは津軽の尻尾を見つめる。
揺れる尻尾が可愛らしくて、それから少しだけ色っぽく見えた。
その尻尾を追いかけたくなってしまったのは、きっと猫になってしまったからだ。サイケは自分にそう言い聞かせた。


おわり


3000hitキリリクであきら様よりリクエストいただきました、Psychedelic Daysで亜種ウイルスによってデータを書き換えられた三人です。
素敵な萌えシチュをいくつかいただいていたのですが、半獣化という形で書いてみました!
返品、書き直しも受け付けておりますので、どうぞ申しつけて下さい。
他にリクエストいただいたものもいつかぜひ、書かせていただきたいと思っております。
このたびはリクエストいただきまして、本当にありがとうございます。


'10.09.18 七草


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