誰が一番?(20000hitキリリク)

※Psychedelic Days設定な臨静+サイ津+子臨→子静


静雄が臨也のマンションにやってくると、必然的に津軽や子静は静雄のもとに集まる。そうなると、臨也たちはそれをぼんやりと眺めることしかできなくなる。
見ている分には非常においしい。仲良く話している姿は、それは愛らしい。
普段はあまり笑みを見せない静雄の表情は柔らかくなり、表情の乏しい津軽が笑顔を見せる。子静に至っては、静雄を見るとにこにこと嬉しそうに笑うのだ。
事の始まりは、ひょんな一言だった。

「津軽って……可愛いよね」

ぽつりと呟いたサイケの言葉に反応したのは、臨也と子臨だった。反応を見せないところを見ていると、静雄たちには聞こえていないらしい。
臨也はふう、とため息を吐く。もちろん、わざとらしく。

「分かってないねぇ、サイケ」
「何が?」

きょとんとサイケが臨也を見ると、臨也はにこりと笑みを浮かべる。人を騙すときの笑顔だと、サイケは知っている。子臨は知らないから、不思議そうに臨也を見た。

「可愛いのはシズちゃんに決まってるよ。普段は土下座したって見せてくれないあの笑顔!あまり見せてくれないからこそ、その破壊力は計り知れないよ」
「土下座って……したことあるの?マスター」
「例えってやつだよ。津軽ももちろん可愛いけど、シズちゃんの反抗的な目を見せた後での笑みには敵わないよ」

ふふん、と妙に誇らしげに言う臨也に、サイケは内心呆れた。しかし、このまま引き下がるわけにもいかない。
津軽が可愛いということをサイケはよく知っている。もちろん、今臨也が言ったような静雄の愛らしさも知っているけれど、それと津軽は別物なのだ。

「津軽だって可愛いよ。一生懸命歌って、上手に歌えたときの笑顔なんて最高だと思うんだ」
「まあ確かに津軽も可愛いよね。でもシズちゃんの色気には敵わないんじゃないかなぁ」
「シズちゃんの色気?津軽だって色っぽいときあるよ」

大人げない会話だ。それをじっと聞いていた子臨は、小さくため息を吐いた。

「馬鹿じゃないの?」

一瞬、臨也とサイケの言葉が止まる。二人揃って子臨の方を見ると、子臨はに、と笑みを浮かべた。

「子静の笑顔の方が可愛いと思うんだけど。無邪気だし、何も考えてないんだろうけど、そこが可愛い。まあ、子供っぽいんだけど」
「それ、子静に直接言ってあげればいいのにねぇ」
「たまには素直になるんだね」
「そ、そういうんじゃないよ!ただ、二人がいかにシズちゃんと津軽が可愛いかを雄弁に語ってるから、結論を出してあげただけだよ!」
「「結論!?」」

傍から見れば、実に大人げない。サイケはともかく、臨也はいっそ馬鹿馬鹿しいくらいだ。
それでも、お互いに譲れないものがある。自分の想い人が誰よりも可愛い、と。
ぎゃあぎゃあと論争を始める臨也たちに、ようやく静雄たちが気付いた。

「何やってんだ、あれ」
「楽しそう……」
「けんか、ちがう?」
「あー、まあ喧嘩じゃねぇとは思う」

仕事用のパソコンに向かって何やらごちゃごちゃと語る臨也の姿は、いっそ不気味だ。パソコンの方から聞こえる反論の声がなければ、どうかしたのかと思う。
臨也とサイケ、子臨がそれぞれ会話しているのだと思いながら、静雄はパソコンを持って臨也の方へと足を向ける。

「何やってんだ、手前」
「シズちゃん!いいところに!」
「はぁ?」

声を掛けた途端にがしっと肩を掴まれ、いきなり唇を塞がれる。驚いたけれどパソコンを落とさなかった。
何が何だか分からないまま、臨也の顔が離れていくまで、静雄は呆然としたままだった。

「ほらね、シズちゃんが一番可愛いだろう?」
「マスター、それ、反則じゃない?」
「ていうか、そんなこと言うんだったら俺たちも戻してよ」
「ああ、ネットワーク接続で共有してるから好きに行き来できるよ」

いつの間に、と思ったサイケだが、ため息一つ吐くと津軽のいるところへと移動する。

「津軽津軽!」
「何だ?」

きょとんとする津軽の肩を掴むと、サイケはそのままちゅ、と唇を重ねた。びっくりした顔の津軽と目が合うと、サイケはにこりと笑う。
可愛い、と思ってしまうのは、きっと欲目なんかじゃない。

「やっぱり津軽が一番可愛い」
「な、何言って!」

か、と顔を赤くさせる津軽に満足すると、サイケはそっと津軽の頬を撫でる。サイケには津軽が可愛くて仕方ないのだ。
それを見ていた子臨はかぁ、と顔を赤くして俯いた。生意気なことを言っても、やはりまだまだ子供なのだ。
そんな子臨に気付くと、子静が子臨の方まで駆け寄った。

「こいざ、こいざ」
「な、何?」
「かおあかい。だいじょうぶ?」

こてん、と首を傾げ、心配そうな顔で子静が子臨を見遣る。そんな顔を見てしまったら、子臨の顔はますます赤くなるばかりだ。

「こいざ、りんごみたい。かわいい」
「か、可愛いのは子静だよっ!馬鹿じゃないの、もう!」
「ふえ?」

驚いて目を丸くする子静と、顔を真っ赤にして俯く子臨。こちらはこちらで可愛らしい。
微笑ましいな、と思わず臨也とサイケはそれを見守っていた。

「おい、手前!これは何なんだよ!」

ようやく正気に戻ったらしい静雄が臨也の胸倉を掴んだ。静雄の方は殴る準備満々だ。
事情の分からない静雄や津軽には、意味が分からないに決まってる。
臨也は静雄ににっこりと微笑み掛けると、楽しそうに口を開いた。

「自分の恋人が一番可愛いってことだよ」
「はぁ?」

意味分かんねぇ、と言いながら手を離す静雄の手を逆に取ると、臨也はそのまま口付けた。


おわり


黄昏様よりリクエストいただきました、PsychedelicDaysの臨静+サイ津+子臨子静で恋人自慢勝負でした。
若干、臨也とサイケには新羅が乗り移っているような、そんなテンションで書いてみました!
リクエストいただき、ありがとうございます!
書き直し等受け付けますので、おっしゃって下さい!


10.01.05 七草


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