愛とは何か(25000hitキリリク)

※ホストパロこれの続編


静雄が半分冗談で言った、ホストを辞めろ、という言葉を実現させて以来、臨也は何かと静雄に絡むようになった。
それまでも会うたびに嫌な笑みを向けてきたりしていたが、最近は様子が違う。静雄には折原臨也という男が分からない。

「シズちゃんってさ、次いつ暇?」

静雄の職場であるバーにやってきては、いつもこう尋ねる。それが前に話した、デートの約束のためであると分かりながら、静雄は眉を顰めて無視した。
何回目だろう。臨也はとにかくしつこかった。
それでも、静雄が忙しくなればすぐに帰っていく。

「じゃあまたね、シズちゃん」

ひらひらと手を振って去る臨也を、いつの間にか目で追うようになっていた。
馬鹿馬鹿しい。そう思って静雄はため息を吐いた。
どうせ臨也の気まぐれだ。飽きたらこなくなるに違いない、と静雄は思っている。
しかし、そう思うと少しだけ苦しいような気持ちになった。自覚している。静雄自身も。けれども、認めたくなかった。



*****



何日か経ったある日、静雄は家に帰る前にコンビニに寄ろうと、いつもの道を外れた。
ただの思いつきで、別に特別必要なものがあったわけではない。そこに臨也がいたのは、本当に全くの偶然だ。

「あれ、シズちゃん?」
「……何で手前がいんだよ」
「ちょっと、ね。それよりシズちゃん、次の休みはいつ?デートしようよ」

様子がおかしい、と感じたのは気のせいだろうか。
静雄の顔を見た瞬間、臨也の顔が少しだけ強ばったような、そんなふうに感じた。

「何かあったのか?」

静雄がそう尋ねると、臨也は驚いて、それからすぐに嬉しそうに笑った。

「もしかして、心配してくれてる?シズちゃんは優しいなぁ」
「はぁ?ざけんな。ねぇよ」

心配した、というつもりはない。ただ、気になったから聞いただけだ。
静雄が眉を顰めると、臨也は何が楽しいのか、くすくすと笑い出した。

「シズちゃんってさ、本当、優しいよね」
「意味分かんねぇよ」
「ねえ、シズちゃん。愛って何だと思う?」
「はぁ?」

笑いもせず、臨也は真顔だった。やはり何かあったのだろう。
静雄は少し考えた。愛とは何か。まるで哲学だ。
昔から臨也はこうだった。理屈っぽくて屁理屈ばかりこねくり回す。そんな臨也が、静雄は嫌いだった。
不器用なんだよ、と笑った友人が頭に浮かぶと、静雄はため息を吐く。なるほど、と思ってしまった。
臨也は器用なくせに、その本質はどうしようもないほど不器用なのだ。

「知らねぇよ。そんなの、人によって違うだろ」

その不器用さを知って初めて、静雄は折原臨也という人間に触れたような気がした。
静雄の答えを聞くと、臨也は目を丸くして、それから小さく笑った。

「……さすが、シズちゃん」

どういう意味だ、と眉を顰める。だから臨也は嫌いなんだ。まるで分かり難い言葉ばかり選んでいるみたいで。
そんな静雄に気付いているのか、臨也はそっと静雄の頬に触れた。

「……臨也?」
「ねえ、シズちゃん。好きって言ったら信じてくれる?」
「は?」
「ホストは愛を売る仕事だ。でも俺は売るような愛を持ってない。それに、もうホストは辞めたしね」
「……おい」
「愛してるなんて言われても、俺にはよく分からない。俺は人を愛してる。だけどね、シズちゃん。人を、愛してるんだ。個を愛しているわけじゃない。愛されるのは悪くないけど、今はいらないんだ」

やっぱり何かあったな、と静雄は内心思って、臨也の口を手で塞いだ。

「少し黙れ」

不器用なのは理解した。しかし、少しは人の言い分も聞け、と思う。
静雄の行動が意外だったのか、臨也はまっすぐ静雄を見つめたまま、言葉を止めた。

「馬鹿だろ、手前」

馬鹿だ。どうしようもない。
だけど、そんな一面を見て、嫌だとは思わなかった。
馬鹿だ。臨也も、そして自分も。
静雄は舌打ちをすると、射抜くように臨也を見つめた。

「信じてやるよ」
「え?」
「だから、手前が……その、俺のこと好きだって」

照れ臭くて、最後は視線を逸らしてしまった。
静雄は臨也の口から手を離す。何を言わせやがる、と思いながら、一息吐いてまた言葉を紡いだ。

「信じてやるよ」

他に何を言えばいいか分からない。俺も好きだ、と言えばいいのか。
きっと、そんな言葉を今の臨也は求めてないだろう。
不器用で馬鹿で、なのにそこが好きかもしれない、なんてどうかしている。

「シズちゃんってさ……」
「何だよ?」
「本当に、ずるいね」

そう言って臨也が笑うものだから、静雄はそれでいいと思った。

「……次の日曜なら、空いてる」


おわり


桐也様よりリクエストいただきました!
続きを、と言っていただけたのが嬉しくて張り切って書きました。
ホストパロ、というよりはただの臨静ですが…。
リクエストいただき、ありがとうございます!
書き直し等受け付けますので、おっしゃって下さい!


'10.12.19 七草


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