仲良しもほどほどに(10000hitフリリク)

※Psychedelic Days設定な臨静+サイ津+子静


津軽も子静も、自分たちのモデルとなった静雄のことが大好きだ。
そういうふうにプログラムされたわけではなく、自然と静雄を慕うようになった。
微笑ましい姿だ。静雄と津軽、子静が楽しそうにしているのは。
サイケだけを仕事用のパソコンに映しているときは、臨也とサイケはそれを見ているときがある。

「最近ちょっと仲良すぎるよね?」
「俺もそう思う」
「シズちゃんってば、俺が誘ったって言うのに俺そっちのけで津軽と子静ばっかり構うし」
「津軽も子静も、シズちゃんシズちゃんって……」

ため息がそろう。同じ声だから同じ音だ。
二人が見つめる先にいるのは、楽しそうにパソコンに向かう静雄と、モニターから嬉しそうな顔で静雄を見つめる津軽と子静。
愛くるしい、と表現できるその姿だが、忘れられてしまうとなると、少しだけ淋しい。

「喋るのうまくなったよな?」
「サイケにも言われた。シズちゃんのおかげ」
「こしず、ことばおぼえた!うぜぇ!のみむし!」
「あー……それは忘れていいぞ」

恋人が取られたような、そんな気分だ。
目の前でイチャつかれて、臨也もサイケも仕事どころではない。

「マスター、仕事しないなら俺も戻りたいかも……」
「まだこっちのファイル整理終わってないよ」
「波江さんにお願いしたら……ああ、これはお願いできないね」

SHと書かれたフォルダを覗き込み、サイケは困ったように笑う。
そこには静雄のデータだけがあった。
画像から事細かに調べた静雄の好み、言動。まるでストーカーだ。
恋人同士となってからのデータもあり、サイケは小さく息を吐いた。

「シズちゃんにバレたら壊されちゃうよ?」
「バックアップとってあるから大丈夫だよ」
「あれ?こっちは?」
「そっちはお前たちの。スクリーンショットだけどね」
「あ、本当だ……」

いつの間に取ったのだろう。PDと書かれたフォルダには、サイケや津軽、子静の画像があった。
サイケがちら、と臨也を見ると、臨也はにこりと笑って首を傾げる。
マスターでありながら、本当に底が知れない。

「あ、シズちゃんが優しく笑ってる!俺に向けてくれたことないのに」
「マスター……あ、津軽が拗ねてる!俺だって滅多に見れないのに」
「おい、お前ら何やってるんだ?」

思わず声を上げた臨也とサイケを、静雄が呆れたような顔で見た。
津軽と子静は不思議そうに覗き込んでいる。
画面越しに津軽を見るのは初めてで、サイケはなぜだか妙に照れ臭くなった。
同じパソコン画面内でしか顔を合わせていない。
サイケは、自分がプログラムであることが少し、悲しく思えた。

「サイケ?」

じっと津軽を見つめていると、サイケの心情には気付いていないながらも、津軽が優しくサイケを呼ぶ。
反則だ、とサイケは思う。

「……早くそっちに戻りたいな」

困り顔で笑ってサイケが言うと、津軽は一度目を丸くして、それからすぐに微笑んだ。
そういうとき、サイケはひどく胸が高鳴る。

「おい臨也、仕事終わったんならサイケ戻してやれよ」
「はいはい。サイケ、また今度でいいからね」
「はーい」

鶴の一声とは、まさにこのことだろう。
静雄の意識が自分に向いたことで、臨也は満足しているらしかった。
転送される間、サイケはじっと目を閉じる。

「シズちゃんさ、ちょっと津軽たちに構い過ぎじゃない?」
「普通だろ?」
「俺に会いに来てくれたんじゃないの?」
「はぁ?」

呆れたような顔をする静雄を見て、津軽と子静が首を傾げる。
本当に仲が良い。自分が輪の中に居れば、臨也は親子気分を楽しめるというのに。

「俺は津軽たちに会いに来たんだ」
「シズちゃん……俺って君の恋人だよね……?」
「う、うるせぇ!こいつらとはここでしか会えないんだからいいだろ!」

顔を真っ赤にして反論する静雄に、臨也はため息を吐いた。

「分かってないよね、シズちゃん。まあ、別にいいけど」

サイケの転送が終わる。サイケが目を開けると、いつもの景色が広がった。
ほっと、胸をなでおろす。

「さいけ、おかえり!」
「おかえり。お疲れ様」
「うん、ただいま」

サイケはちょっと離れている間さえ落ち着かないのに、臨也も静雄もすごいと思う。
だからこそ、サイケは臨也の気持ちがちょっとだけ分かる。
独り占めしていたいのに、誰かに取られてしまう。そんな気持ち。
つまり、早い話が臨也もサイケも嫉妬していたのだ。仲良くしている三人に。

「手前のそういう言い方がムカつくんだよ!はっきり言えよ!」
「嫌だね。かっこ悪い」
「あ゙ぁ?」

喧嘩が始まりそうなのを見て、津軽が心配そうな顔でサイケを見る。同時に子静がくい、とサイケの裾を引っ張る。
サイケは小さくため息を吐いた。

「マスター、シズちゃん、喧嘩はよくないよ」

臨也と静雄を見ていると、サイケはどんどん人間が羨ましくなる。人間に近付く。
ヤキモチを妬くようになったことが、サイケは嬉しいような複雑な気分だった。


おわり


10000hitフリリク企画にて、匿名様よりリクエストいただいた、デレデレに仲良しな静雄と津軽&子静にヤキモチを妬く臨也とサイケ、でした。
のけ者にされてヤキモキする臨也とサイケは、そっくりなんだろうなと思いながら書いてました。楽しかったです!
書き直しも受け付けますので、どうぞおっしゃって下さい。
このたびは企画に参加いただき、本当にありがとうございます。


'10.10.25 七草


[←prev] [next→]

[back]

[top]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -