天秤はいつまでも俺が重いまま

「ねえシズちゃん、俺のどこが好き?」

戯れに臨也は尋ねてみた。
静雄がまともに答えないだろうことくらい、予想している。けれども、もし答えたら。その答えを知りたいと思った。
臨也は静雄が好きだ。どこが好き、なんて聞かれたら、化け物みたいなところ、と答えるだろう。
もちろん、静雄が嫌な顔をするところが見たくて、そう言うのだけれど。
本当のことは誰にも言わない。静雄にも。それが臨也だ。

「……」
「あれ?黙っちゃうくらい一杯あるのかなぁ」
「俺、お前のどこが好きなんだろうな。ていうか、好きなのか?」
「うん、とりあえずそれひどいよね」

思わず臨也はため息を吐いた。分かっていた言葉だけれど、静雄の場合、本気で思っているから性質が悪い。
ある意味、天然なんだろうか。
じっと臨也が見つめると、静雄は不思議そうに首を傾げた。

「何だよ?」
「シズちゃんってさ、バカだよね」

可愛いな、なんて思うの自分自身もバカだけれど、と臨也は内心思う。
静雄は嘘を吐かない。いつだってまっすぐだ。
臨也のどこが好きなのか、本当に好きなのか、きっとわからないのだろう。

「はぁ!?んだよ、手前、喧嘩売ってんのか?売ってるんだな?売ってるんだよな?」
「はいはい、そうすぐ怒らないでよ。血圧上がるよ?」
「手前のその人をバカにしたような喋り方がムカつくんだよ!」

理由もなく、喧嘩もせずに一緒に居られるということは、それなりに心を許している証拠だろう。
元々静雄は短気な部分を覗けば、穏やかさを愛する性格のはずだ。
大嫌いな、大嫌いだった臨也を前にして、こうやって言葉を交わしている時点で、それなりに好意を示しているのだろうけれど。

「そういえば、シズちゃんから好きって言葉聞いたことないね」
「言ったことねぇよ」
「うん、だよね。別に良いけど」

どこが好き、でなく、どこが嫌い、ならあっさりと答えてくれそうで。
臨也は困ったように笑ってため息を吐いた。


おわり


'11.05.24


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