はじめまして(日々津)

出会いは突然。だけど、必然だった。
津軽が臨也のマンションに遊びにいく。これは最近ではよくあることになっていた。
臨也のマンションに行けばサイケがいる。それに、デリックもいる。
だからいつも静雄に頼んで連れてきてもらっているのだ。

「こんにちは、君が津軽?」

いきなり現れた男に津軽は目を丸くした。
頭の上には王冠、マントをまとい、白馬に乗っている。
何かで見たことあるな、と津軽は考えながらその男を見つめる。顔立ちは臨也やサイケと同じだが、その二人ではないと分かった。あの二人は、きっとこんな格好をしない。
ああ、そうだ、と内心思う。思い出した。この格好は昔絵本で見たことがある。

「……王子様みたいだな」

ぽつりと津軽が言うと、男は嬉しそうに笑う。
さっと白馬から降りると、津軽に向かって手を差し出した。その動きが自然で、思わず津軽は見とれてしまった。
そもそも、室内で白馬はどうなんだ、と突っ込む方が先だったのかもしれない。でも、それを忘れてしまうくらい、津軽にとって目の前の男は不思議な存在だった。

「はじめまして、津軽。俺は日々也」
「日々也?」
「そう。君だけの王子様だよ。なんてね」

楽しそうに笑う日々也を見て、津軽は一度首を傾げる。顔はサイケと同じで、声も一緒。でも全然違う。
津軽がじっと見つめていると、日々也は津軽の手を取って甲に唇を落とした。

「ねえ、津軽」
「……何だ?」

臨也ともサイケとも違う。それなのに、不思議と昔からよく知っているような、そんな感じがした。
この気持ちは何だろう。掴まれた手をじっと見つめ、それから日々也の目を覗き込んだ。
底の知れない男だ。そう感じる。
こうして振る舞っているのは、一体どこまでが本気なのか分からない。

「日々也は俺のこと知ってるのか?」
「うーん……そうだなぁ。知っていると言えば知っている。でも、知らないと言えば知らないね」
「なんだよ、それ……」

はぐらかされたような気分になる。津軽がムッとして睨むと、日々也はふわりと笑みを浮かべた。

「これから良く知っていきたい。それじゃだめかな?」

悪い人は素敵な笑みを浮かべるものだよ、と言った臨也の言葉が津軽の脳裏に浮かぶ。けれども、思わず小さく頷いてしまった。

「じゃあこれからよろしくね、津軽」
「よろしく、日々也」

絵本で見た王子様と同じような、綺麗な笑みを浮かべる日々也に
、津軽は思わず見とれてしまった。
この気持ちが進化するのは、まだまだ先の話だけれど。


おわり


'10.12.22
'10.12.25加筆修正


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