コンプレックス

※ツイッターで開催されていたエアー静雄受けオンリーに投下したものの加筆修正版です。
来神時代捏造注意。


健康診断のとき、必ずついてまわる身体測定。臨也はそれが好きではなかった。
平均程度の身長ではあるのだが、一つだけ、問題がある。
平和島静雄。身長、185センチ。
細身ではあるものの、静雄は背が高い。臨也はこれがコンプレックスだった。
好きな子相手に10センチも差をつけられるなんて不本意だ。元の体格が違うのだから無理はないのだが、おもしろくない。

「臨也、まだ気にしてるの?」
「うるさいよ、新羅」
「別に身長くらい何でもいいだろ?」
「背が高い人に言われたくないよねぇ」

出席番号は臨也の後は京平、その後が新羅だ。並んでいると京平との身長差も目立つ。
僅差ではあるものの、臨也の身長は新羅よりも低い。他では勝てる自信がある。しかし、身長だけは新羅でさえ抜けない。
つまらないことを、と言われるかもしれないが、臨也にとっては死活問題だ。

「そんな気にしなくても、静雄は気にしてないと思うけどね」
「だろうな」

ちら、と新羅と京平が静雄を見る。静雄はクラスでも背が高い部類に入るのだが、本人は何も気にした様子がない。
無駄のない筋肉、長い脚。スタイルがよく、黙っていればモデルくらいできそうだ。
臨也はそれを見て、小さく舌打ちをした。臨也の背が低いのではない。静雄の背が高いのだ。
不意に静雄と目が合う。途端に静雄は眉を顰めた。

「んだよ、見てんじゃねぇよ、ノミ蟲」
「何で俺限定なの!ていうか、シズちゃんがいけないんだよ!俺の苦労少しくらい分かってよ!」

体育館に臨也の声が響く。辺りにいた生徒の注目が臨也と静雄に向いた。
二人の不仲は校内でも有名だった。廊下をガソリンの入ったドラム缶が転がる、なんて事態を起こしたということは周知。また何か起こるのでは、と周囲に緊張が走った。
しかし次の瞬間、別の意味での緊張が体育館を包み込む。

「キスするとき、背伸びするなんてかっこ悪いだろ!」

臨也の口から出たまさか過ぎる言葉に、一瞬、体育館内がしんとする。すぐに反応したのは、静雄だった。
顔を真っ赤にさせた静雄は、一瞬目を丸くし、しかしすぐに臨也を睨みつける。
可愛いな、と思いながらも、臨也は負けじと静雄を見つめ返した。

「はぁ!?」
「しかもシズちゃんが屈んでくれなきゃできないし!」
「て、手前!こんなとこでんなこと言うんじゃねぇよ!」
「シズちゃんの背が高いのがいけないんでしょ!」
「手前の背が低いのがいけねぇんだろうが!」

周りの空気が凍る。自身の耳を疑うものが出たり、聞かなかったふりをするものが出たり。その中で、京平は呆れたような溜息を吐き、新羅は相変わらずにこにこと笑っていた。

「臨也って静雄の前ではかっこつけたいみたいなんだよね」
「あれじゃ無理だろ」
「だよね」

周りの空気なんか無視して、未だ痴話喧嘩を続ける二人。
口論で済む間に止めよう、と京平は静かにため息を吐いた。


おわり


'10.11.15
'10.11.21 加筆修正


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