君に向かう想い R15

朝が来て、目を開ける。隣に眠る静雄の姿を見て、臨也は苦笑した。
いつだってその寝顔が隣にあればいいと思う。
まだ眠り続ける顔を眺めながら、静雄が眠りから覚めたとき、一番に見てほしいと臨也は思った。
幾度抱いても、臨也は静雄を手に入れることができずにいた。
静雄には大切な人たちがいる。最初はそれでも構わないと思っていた。
しかし、最近はそれ以上の欲を抱くようになった。

「いっそ、閉じ込めたいくらいだよ、シズちゃん……」

閉じ込めて、誰にも見せず、誰にも触れさせずに置きたい。
そう願うほど、臨也は歪んでいる。他の誰にも渡したくないと思う。
これは愛なんかじゃない。単なる欲だ。

「ん……い、ざや……?」
「おはよう、シズちゃん」

静雄が目を開ける。
寝起き姿は、いつもよりずっと幼く見える。
臨也はそんな静雄に笑みを見せた。
静雄の目に自分が映っているとき、臨也はどうにも表現のできない満足感を得られるのだ。

「朝から何ニヤついてんだよ、気色悪い……」
「ひどいなぁ、シズちゃん。シズちゃんが可愛すぎて」
「……しね」

体を重ねた日であっても、静雄は臨也のマンションに泊まろうとはしない。
臨也はそれが不満で、だから昨夜は静雄の意識が飛ぶまで貪り続けた。
奥まで入り込んで、一番弱いところを抉って。
嫌だ、やめろ、離せと喚く静雄の言葉なんて聞こえないふりをして、何度も静雄の奥に欲を放った。
そうしてようやく、静雄を隣で眠らせることができるのだ。
静雄はともかく、臨也はもう、静雄がいなくては生きていけないのかもしれない。
無茶をしてでも隣に留めておきたいだなんて、どうかしている。

「朝食の用意をするよ。食べていくよね?」
「あ?あぁ、じゃあ……」

にこりと笑うと静雄に口付け、臨也はそのままベッドから降りた。

「シズちゃんはまだ寝てていいよ。シズちゃんのために、作るから」

そう言って笑うと、静雄が顔を赤くするのが見える。
そんな静雄を見ると、いつだって臨也の心は満たされた。
閉じ込めたいというような、独占欲にまみれた思いも、そのときは薄れる。
ほんの、少しだけではあるけれど。

「らしくねぇこと言ってんじゃねぇよ!」
「なーに言ってるの。昨夜は無理させちゃったし、ね」

臨也は人間が好きだ。その存在そのものを愛している。
静雄は持つ力こそ化け物じみているけれど、その心は誰よりも人間らしいと臨也は思っている。
ただ、臨也の抱く人間への愛と、静雄にだけ向けられるこの欲望は違う。
他の誰にも渡したくない。傷付けるのも癒すのも、全て自分であればいいと思う。

「何が食べたい?リクエストに応えるよ」
「……オムライス」
「朝から?まあいいけど」

にこりと笑うと臨也はそのままキッチンへと引っ込んだ。
ふと思い出す。誰かのために料理をするなんて、これが初めてのことかもしれない。
末期だ。臨也は笑ったままため息を吐いた。


おわり


'10.09.01


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