欲望が先か、愛が先か R18

濃密な夜の始まりは、いつだって臨也の方からサインを出す。
なんだかんだと静雄が応えるから、臨也はそれで満足していた。
臨也自身、この想いが愛や恋と言える感情なのか、理解していない。
そんな自分さえ、人間なのだと思うと、臨也は内心首を傾げる。
これが自分でなければ、人間は素晴らしいと言えた。

「最初にシズちゃんを抱きたいと思ったのはいつだろう」
「何、言って……」
「抱き締めると、こんなに落ち着くなんて思わなかった」

押し倒された状態のまま、静雄は眉を顰める。
臨也は普段、うるさいくらいによく喋るけれど、こうして夜をともにするときは比較的静かだ。
これから始めよう、というところで一体何を言い出すのか。

「臨也?」
「シズちゃんはさ、どうして俺に付き合ってくれるの?」
「何だよ、今更……」
「ずっと思って聞いてなかった。こうして付き合ってくれることに満足してて忘れてたよ」

ぎゅ、と抱き締められると、静雄はため息を吐いた。
――ああ、今日もわけの分からないことを。
臨也のことはよく分からない。
分かりたいと思ったことはなかった。
折原臨也とは、そういう人間なのだ、というのが静雄の認識だ。
こうして静雄を抱くのだって、単なる気まぐれなのだろう。
静雄自身、本気であるつもりはない。
臨也を相手に、本気になったところで報われるつもりもない。
不毛だ。実に不毛なのだ。

「いいから、続けろよ」
「ドライだねぇ、シズちゃん」
「ん、くっ……」

臨也のペニスが静雄の秘部に触れる。
それだけでぴくりと反応するこの身体は、臨也によって作り変えられてしまったのかもしれない。
何度も奥に受け入れた。抵抗することなく。
本気で抵抗したのは、最初の一度きりだ。

「ふ、ぁっ、やっ……」
「ん、きもちい?」
「き、くなっ、しねっ!」
「セックスしてるときに言う言葉じゃあ、ないよね」

臨也はクスクス笑う。静雄は臨也の首に手を回した。
身体の奥が疼いて仕方がない。
中途半端な状態で止められるのはつらいのだ。
それは臨也も同じであるはずだ。
静雄はぐっと臨也を引き寄せ、唇を塞いだ。
すぐさま舌を触れさせてくる臨也に、静雄はおとなしく答えた。

「セックスしてるときのシズちゃんは不思議だね。喘ぐばっかりで全然話してくれない」
「手前だって、ん、そうだろ、が……んぁっ!」
「だって、そういうときくらい喧嘩したくないでしょ?」

臨也は焦らすように、まだ挿入しない。
もどかしさから静雄が睨み付けると、臨也は目を細めて笑った。

「ほしい?」
「とっとと、挿れ、ろっ……!ひぁっ!」
「んっ」

ずぶ、と臨也が一気に静雄を貫いた。びくん、と静雄の身体が揺れる。
いくら頑丈な静雄でも、この瞬間だけは慣れない。
ぎゅっと臨也の首に回す手に力がこもると、臨也は嬉しそうに口元を歪める。

「い、ざやぁっ……ひ、ぅっ!」
「シズちゃ、んっ、すごく、イイね」
「ふっ、んんっ……」

静雄は意識が飛びそうになる。
臨也が静雄に触れるとき、こんなふうに強引に突き上げたりしなかった。
気持ち悪いくらい、優しく、まるで溶かすように触れる。
それが今日は強引だ。

「ひっ、や、あっ!」
「シズちゃん、すっごく可愛い」
「やめっ……!」

奥を抉る臨也の熱に、静雄はぎゅっと目を閉じた。
熱い。火傷してしまいそうだ。
臨也の首から手を解くと、今度は背中をぎゅっと抱き締めた。

「あ、あっ!」
「ん、火傷しちゃいそう。シズちゃんのナカ、すっごく熱いね」
「くっ、んぅ……あ、あぁああああっ!」

ナカを擦るたび、びくりと震えて締め付けてしまう。
熱くて、気持ちいい。
静雄は息を詰めると、ぎゅるっと勢いよく白濁を吐き出した。

「っと、イくならイくって言ってよ、シズちゃん」

それでも臨也は律動を止めない。
静雄の締め付けを楽しむよう、何度も腰を打ちつける。

「や、めっ……うぁっ!」
「出すよ」
「ひっ、ふは……」

どくんと静雄の体内で臨也のペニスが脈打つと、奥に叩きつけるように欲を吐き出した。
身体の奥に熱を吐き出される。
その感覚は静雄を満たすと同時に、ひどく焦燥感に駆られる。
どうしてだろう。こんなにも近くにいるのに。
静雄はぼんやりと臨也を眺めた。
ちゅ、と額に唇が落とされる。

「シズちゃんはさ、どうして俺に付き合ってくれるの?」

臨也はまた、同じ問い掛けをする。
ずっと応えるつもりはなかった。静雄にとって、それを口にするのは負けのようなものだ。

「あい、してる、からだ、くそっ……」
「え?」

臨也がきょとんとした顔をする。
それがおかしくて、静雄はへにゃりと笑った。

「……ばぁか」
「馬鹿はひどいな、シズちゃん。俺も、愛してるよ」

困ったように笑うと、臨也は静雄に口付けた。
気まぐれなんかでも、遊びなんかでもない。
あるのは、愛だけだ。


おわり


'10.08.29


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