冷たいチョコレート

※マフィアな臨静です。
パロディものなので、苦手な方はご注意願います。


ボスである帝人の命を受け、静雄はオリハライザヤの暗殺を担った。
本来であれば、人殺しを好まない静雄だが、オリハライザヤという人物がいかに卑怯であるかを良く知っている。
人をまるで駒のように扱う臨也を、静雄は赦しておけなかった。
何より、普段はその手の命令を禁じるボスの命令だ。受けないはずがない。

そうしてたどり着いた折原邸。静雄は檻に囲まれていた。

「くそっ……!」
「君ってさぁ、本っ当に単細胞だよね。もうおかしくって堪らないよ!」
「いーざーやー!」
「おっと、その檻には触れない方がいいよ?電流が流れるように仕掛けてあるからねぇ」

掴もうとした檻にバヂンと電圧がかかる。静電気なんて生易しいものではない。
静雄はギッと臨也を睨み付けた。
それを見ると、臨也はそれはもう嬉しそうに笑った。

「やっと君を手に入れられる。本当に長かったよ」
「何言ってやがる!出しやがれ!」
「嫌だね」

檻から臨也の手が静雄に触れる。
ぞわり、と静雄の背に嫌なものが走る。
これだから臨也は嫌いなのだ。
臨也と静雄の付き合いは16の頃から続く腐れ縁だ。
腐れ縁だなんて生易しいものではない。
顔を合わせれば殺し合いを始める。
言葉なんて必要はなく、そこにあるのは嫌悪と憎悪だけのはずだ。

「い、ざや……」
「ねえシズちゃん、いや……今は喧嘩人形と呼んだ方がいいのかな?君が“仕事”をしに来ることは知ってたよ。君のところのボスは本当に面白い人だよねぇ」
「手前!竜ヶ峰に手ェ出すんじゃねぇぞ!」
「やだなぁ、シズちゃん。俺よりもずっとあの子の方が怖いと思うんだけどねぇ」

臨也はクスクス笑うと、隠し持っていた銃を静雄に突き付ける。
負けじと静雄も銃口を臨也に向けた。
銃を持っていれば、檻なんて関係ない。
互いに黒く光るそれを手に、相手を見つめた。

「銃、ね。これってさ、恐ろしい道具だよね。ちょっと引き金を引くだけで、人の命を奪えるんだからさ」
「黙れ!殺す殺す殺す殺す!」
「あは、シズちゃんって銃も似合うんだねぇ」

面白く笑える状況ではない。しかし、笑えるのが折原臨也だ。
静雄は舌打ちをした。
反吐が出る、と友人の一人は言っていた。ただし、彼はそれを褒め言葉だと言っていたが。
吐き気がする、とボスの友人は言っていた。ありったけの嫌悪を込めて。
まさに、その通りなのだろう。
それでもずっと、静雄はどこか臨也の持つ紅い目に魅入られてしまっている。
その目と対峙するときだけは、ただ破壊すればいいだけなのだ。


静雄が引き金を引く。
弾が臨也の頬を掠めた。
臨也は微動だにしない。

「そう、撃つんだね」
「殺すっつってんだろ!」
「実に残念だよ、シズちゃん」

今度は臨也が引き金を引いた。
弾ではなく、仕込まれた針が静雄の腕に刺される。
静雄がその場に倒れた。

「さすがにこれは効くよね」
「な、にしやがっ……!」
「象にも効く麻酔薬なんだけど、さすがだね、シズちゃん」
「い、ざやぁ……!」
「おやすみ、シズちゃん」

クスクスと笑う。
臨也はボタン一つで仕掛けた檻を外すと、倒れ込んだ静雄に覆い被さる。

「やっと、やっとだ!やっと手に入れた!喧嘩人形を!平和島静雄を!」

誰も聞いていない、冷たい部屋で臨也は歓喜の声を上げる。
静雄は眠ったまま、ピクリとも動かない。

「ねえ、シズちゃん。これから君は俺のものだよ。ずっとずーっと、ね?」

一枚一枚、臨也は静雄を包む服を剥がしていく。
そうして生まれたままの姿にすると、無防備にさらされた首筋に唇を寄せる。

「アイしてるよ、シズちゃん」

臨也は笑うと、きつく吸い上げる。
残された紅い痕を見て、また嬉しそうに笑った。

「これで君は俺のものだ」

眠る静雄に、その声は届かないというのに。


おわり


'10.08.26


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