はじめてのちゅう

※5歳児臨也×高校生静雄なパロディ物



どうしてこうなった、と静雄は頭を抱える。
平和島静雄、17歳。
現在、一回り年下の園児に狙われている。

「シズちゃん、らいねんでけっこんできるとしになっちゃうけど、だめだよ。あと13ねんまってなきゃだめだからね!」
「あー、はいはい……」

現在5歳になったばかりの折原臨也。
偶然道端で出会ったことをきっかけに、静雄に懐くようになった。
きっかけはどうにもきちんと思い出せない静雄だが、臨也は一目惚れなんだよ、と言っている。
ませた子供だ。そう静雄は思う。

「シズちゃんはさ、だれかとつきあったこととかあるの?」
「ねぇけど」
「そっか、じゃあちゅうしたことないよね?」
「あ、ああ……」

嬉しそうに笑う臨也を見て、静雄はどうリアクションしていいのか悩んだ。
このちびっ子は、静雄のことを好いている。
好きだ、愛してる、と恥ずかしげもなく伝えてくる。
自身の持つ力ゆえに人との接触を持てずにいた静雄にとって、懐いてくれる臨也はそれなりに可愛い。
しかし、それは恋愛感情なんてない。
むしろあったら静雄は単なる変態だ。

「シズちゃんシズちゃん!」
「何だよ?」
「ちゅうしよう!」
「はぁ!?」
「ちゅうだよ、ちゅう!」

ぐいぐいと裾を引っ張る臨也に、静雄はため息を吐いた。
振り払うことは容易に可能だ。しかし、相手は小さな子供である。
静雄には到底、臨也を振り払うなんてことはできなかった。
しゃがんで目線を合わせると、静雄は臨也をまっすぐ見る。

「そういうのは好きなやつにしろって――」
「シズちゃんがいちばんすきだよ。いつもいってるでしょ?あいしてるよって」
「あのなぁ……」
「すきあり!」

ちゅっと可愛らしい音を立て、臨也の唇が静雄の唇に触れた。

「へへ、うばっちゃった!」
「なんっ……!」
「シズちゃんのはじめてもーらいっ!」

楽しそうに笑う臨也を見て、静雄は思わず顔を赤くする。
5歳児に奪われた。ファーストキスを。
怒ることもできず、静雄は気を落ち着かせようと深呼吸をした。

「ねえシズちゃん」
「何だよ……」
「おれもちゅうはじめてだったんだよ。シズちゃんにあげちゃったね」
「こんの、ませガキ!」

静雄が怒気を抑えつつ怒鳴ると、臨也はくすくすと笑う。
無邪気な笑顔だ。顔だけ見れば子供らしい。

「シズちゃんシズちゃん!」
「あ?」

返事をすると、またちゅう、とキスをされた。

「またうばっちゃったー!」
「臨也っ!」
「シズちゃん、あいしてるよ!」

にっこり笑う臨也を見て、静雄はブロック塀を殴りつけることしかできなかった。
無邪気な笑顔ではしゃぐ臨也は、それはもう愛らしい子供に見えるだろう。
将来、末恐ろしいことになりそうだ、と静雄はため息を吐いた。


おわり


'10.08.22


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