変化

――調子が狂う。
――苛々する。

いつものように静雄は仕事に出ていた。
取り立ての仕事はなかなか疲れるものだ。
素直に払う人間なんて、そういない。
だからこそ、取り立て屋なんて職業が成り立つのではあるけれど。

――うぜぇ……。

しかし、静雄が苛立っているのは仕事とは無縁だ。
折原臨也。
高校の同窓生であり、静雄の因縁の相手である。
そんな臨也を先程見かけた。
ぶん殴ってやろうと静雄はそちらへ足を向けたのだが、臨也は一人ではなかった。
静雄の見知らぬ女性と一緒にいて、何やら楽しそうに話し込んでいた。
それを見た瞬間、静雄は気持ちが殺がれた。
たとえ誰かと居ようが、静雄は関係なく臨也を殴りにかかる。
ただ、そうする気分にはなれなかった。
結局臨也には何もしないまま、静雄は仕事に戻り、今に至る。


「静雄、今日はこれでしまいだ。
飯でも食ってくか?」
「……そうっすね」

先輩であるトムの言葉に頷きながら、静雄は苛立っている。
それをぶつける対象がいれば、きっとすぐにでも爆発していただろう。




夕食を終え、帰宅する。
静雄の苛々はまだ収まらないままだ。
そんな静雄に気付いたトムにはゆっくり休めよ、と言われてしまった。

――全部ノミ蟲のせいだ。

頭に臨也を思い描き、静雄はさらに苛立った。
しかし、これから新宿まで出向いて殴ろうとは思わない。
自分でも不思議に思いながら、静雄はごろりと横になる。

――すっきりしねぇ……くそっ。

どうしようもできなかった。
この気持ちが何なのか、静雄は知らない。
今ある苛立ちに、嫉妬という感情が混ざっていることなど、静雄はまだ、気付かない。


おわり


'10.08.13


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