創作memo | ナノ

 出られない国の話(その後の話)

レクス「――それで、お前が見た青年はその後どうなったんだい?」
フィン「さあね、僕はすぐに宿に戻ったから分からない。でも、しばらくしたら街から姿を消したって聞いたよ」
レクス「へー、じゃあ夢がかなったんだ」
フィン「どうだろう。そんなに気力があるとは思えない。街を出ても当てが見つからず、道中倒れてるか怖気づいて身を隠しているんじゃない?」
レクス「結構言うね。可哀想だろうに」
フィン「君から憐みの言葉を聴けるとは思わなかった」
レクス「これでも、人に対しての情は多少なりとも持っているつもりだよ」
フィン「情、ね……本当にあるのならここまでひどくはならないと思うな」
レクス「どういう意味かな」
フィン「この国の人たちは、誰も心から笑っていないんだ。喜んだふりをして気持ちは負の感情で溢れてる。最初に移住してきた人たちは何を考えてたんだろう」
レクス「さあ。どうせろくでもないことを考えていたに違いないね」
フィン「本人が言うんだね」
レクス「何か言った?」
フィン「いや……それより、この街に止まってる列車」
レクス「お前には乗ることはできないよ。その資格と勇気がない限りな」
フィン「はは……もし僕にその資格があると聞いたら?」
レクス「見るからにとろそうなやつがか? ありえないね」
フィン「人を見かけ判断しちゃいけないよって、教わらなかったの?」
レクス「生憎、家族は弟だけなんでな。常識を教えるのは私の方だよ」
フィン「弟さん、いるんだ?」
レクス「歳は離れているけどね。以前は鉱夫をしていたよ」
フィン「金がとれる山…。掘り当てた青年…」
レクス「……もう行くよ。詮索を掛けられるのは御免だから。旅人さん、よい旅を」
フィン「こちらこそ、お話できて良かったです」

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2015/05/31 (21:27)


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