参加創作log | ナノ
Diary

 先代への墓参り
【失色】
「島まで船を渡してほしいの」

♭♭♭

そう頼んで、私はアマシズから離れた島へ向かった。代々十二騎士の亡骸が納められてる宮のうち、一つの建物に真っ直ぐ向かう。此処は限られた者しか踏みいることのできないところ。元々ホルダーでもなかった私は今の青にテイカーにしてもらった。
屋内に続く扉を開けると、誰も入ってなかったのか小さな埃が舞った。汚れているのでは先代たちに失礼ではないか。後でアイツに掃除させてやる。
そのまま足を奥の壇上まで進ませる。前方には天秤が傾くような構図でステンドグラスが型どられている。夜空に浮かぶ星座をイメージしていると聞くが、そもそもこの世界には幾数もの枝が各地を埋め尽くしており星座なんて早々見れるものではない。運が良くて晴れた日の夜に少しだけ輝くものがあるくらいだ。
ステンドグラスの前には一枚の石碑があった。黒く塗りつぶされたそれには幾つもの名前が彫り込まれている。
様々な名前がある中、一番端のものを見つける。私はその名前の前にしゃがみこみ、持ってきた小さな花束を置く。

「私は、元気でやってるよ…」

独り言のように細々と呟く声は、何だか寂しげに思える。

「テイカーになったの、私。信じられる? あれほど他の人に付くのを嫌がってた私が、今や青のテイカーよ。主は貴方の甥っ子。自分でもなんでだろうって…笑えてしまうわ」

笑うと言っても、本当には笑えない。代わりに胸の内から瞼へ伝わって流れ出るものがあった。

「……寂しいよ…」

貴方がいないと、苦しくなる。
あの時守れなかった、その力が無かった自分が悔しかった…。だから、大切な人を…貴方を。
私は、しばらく泣いてから宮を出た。円になってる十二宮から一歩外に出ると船着き場があり、一艘の舟に腰掛けてる少年を見つける。

「終わったの、フィア」
「まあね、今年もありがとう。店まで休んでもらって」
「毎年だから慣れてるよ。……あのさ、ごめんな…」

少年は申し訳なさそうに謝った。
どうして謝る必要があるのか。私は、黙って青い髪を軽く叩く。

「別にアンタのせいじゃないでしょ。気にしなくていいの」
「フィア……」

気にするのは、私だけでいい。
あの人が亡くなった後、目の前の少年が赤子とて、騎士として生を受けた。最初は彼の代わりにとしか思えなくて、テイカーになることを拒んだ。同じ運命を辿られるのが怖かったから、逃げていたかもしれない。
でも今はコイツのテイカーである。
守れなかったあの人の代わりに、私が守るのだ。
世界を、そして。


青の運命を…。
2014/08/27

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