鳥は自由だ。自由に空を飛び、好きなときに好きな場所で羽を休める。それでもって彼等なりに精一杯美しく存在しており、私の肩に止まったこの鳥もまた、自由に力強く生きていた。そんな鳥に憧れていた昔の私の夢は叶っているのか、寧ろ離れているのかはわからない。だが一つ言えることは、人は決して鳥に成ることは出来ないのだ。

彼曰く、先程の男の16番のプレートはクラピカくんのターゲットで、男が取ったであろう403番のプレートはレオリオくんの物らしい。成る程なあ、やっぱり世の中上手くいかないもんだね。

「…駄目だと言うのなら、たとえキルアの姉であろうとこちらも実力行使でいかせてもらう」

そう言って二双の木刀を構えるクラピカくんと、ワンテンポ遅れて身構えるレオリオくん。恐らく、私が16番に手刀を入れるところを彼等は見ている。だとしたら少なからず私の実力を知っていることになるだろう。にもかかわらず、プレートをくれなければ実力行使で奪うと彼は言う。なんと無謀で素晴らしいことだろう。相反する感情が、一気に押し寄せてくる様な、変な感じがした。
我が家では敵わない相手とは戦うなと、耳にタコが出来るくらい聞かされていた。そんなの真っ平御免だとか思ったが、だがやはり子にとっては親がすべてだった。まだ幼き頃はその教えに従順に従って、逃げて逃げて逃げまくった。その度に悔しさにうちひしがれて泣いていた。一度だけ、耐え切れなくなってヒソカの前で泣いてしまったことがあったが、それ以外で悔し涙は誰にも見せたことはない。だから恐らく、家族は誰も私の弱さを知らない。自室で声を押し殺して泣く自分の姿にもまた涙が溢れる、悪循環。そういうときは大抵泣き疲れて寝てしまい、次の日には目が腫れてなかなか部屋から出られなかった。
そんな世界に生きてきたものだから、今の彼等がとても輝いて見えて、羨ましかった。彼等を見ていると昔の私があまりにも格好悪くって情けなくなった。

「…さあ、どうす……」

「うん、いいよ。あげる」

ポケットから二枚のプレートを取り出して、クラピカくんに投げ渡す。彼は一瞬ポカンとした後、飛んでくるプレートを慌ててキャッチした。レオリオくんはプレートと私を交互に見ながら本当にいいのか?と問う。

「うん。だって必要なんでしょ」

「それはそうだが……なまえさんは…」

「私はいいよ、気にしなくって。元々ハンターになる気はなかったし。どうせならそんな私よりもハンターになりたいっていう君達になってほしいし、それに」

私はハンターに向いてないから。
そう言うと二人は少し悲しい顔をしてそうかと言う。彼等はお礼に一緒にプレートを探すと言ってくれたが、断っておいた。

「いいハンターは動物に好かれると聞く」

私の肩に止まっている鳥を見ながらそう言うクラピカくんに、ありがとうと言ってその場を後にする。さて、次はどっちに行こうかな。私が歩き出して間もなく、肩にいた鳥が力強く大空に飛び立った。




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