うおんうおんと飛行船の独特な音が響く。あの緊迫した部屋にいては息が詰まってしまいそうだったので、船内見学がてら風呂場を探すことにした。あるのかな。
「あ」
「……!なまえさん!」
フラフラ歩いていたら窓際で仲良く並んでいるゴンとキルと鉢合わせした。ほんと、仲良いなー。やっぱ歳が近いと馬が合ったりするのかな。
「何だよ姉貴、さっき一緒に探検しようって誘ったら断ったくせに」
「違う違う、私お風呂探してんの」
「それなら係員さんに聞けばいいんじゃない?…あ、と!なまえさんに渡すものが」
そう言ってゴンはポケットの中から見覚えのある、掌サイズの機械を取り出した。あ、忘れてた。
「私の携帯!わざわざありがとー」
「げ、姉貴忘れてたのかよ」
どうりでずっと繋がらなかったんだ。
キルが頭を抱えて溜息をつく。弟にここまで呆れられる姉って自分でもどうかと思う。ごめんねと頭を撫でると、うるせーと言いながらも頬を赤らめるキルはやっぱり子供だなあ、と思って何だか優越感。
暫く談笑した後、これ以上二人の友情に割って入るような真似は出来ないと思い、別れることにした。
「……ゴン、さっき言ったやつ、やっぱ姉貴以外な」
「あははは、うん」
「あ、いた」
無事風呂も見付かり、次は寝床を探してさ迷っているとイル兄と鉢合わせ。そういえばこの人その顔のまま寝るのかなあ。
何?と首を傾げると、彼は私の腕を引いて歩き始めた。え、なになに、私なんかした?
「寝床探してんだろ。一緒に寝てやるよ」
「え、何でそんなに上からなの」
するとまるで謀っていたかのように後ろからヒソカがじゃあボクもご一緒していい?と言って現れた。ばかばか、コイツと寝たら私の身体が危険に曝される!あ、でもイル兄いるから大丈夫か。
「……ていうかさ、この二人に挟まれる私ってある意味勇者だよね」
どういう意味さと言うイル兄に、何でもない!と貰った毛布を頭まで被る。…何だろ、この感じ。懐かしいような……ああ、そうか、確かうんと小さい頃お父さんにイル兄と二人で森に放り投げられたんだっけ。その時に夜は冷えるからって一緒に丸まって……。まあその時ヒソカはいなかったけど。そういえばヒソカと初めて会ったのはいつだっけなあ。私が初めて家から飛び出した日………だっけ。
「…寝ちゃったね◆」
「………」
イル兄がおやすみ、と私の額にキスを落としたことは、私は知らない。
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