数時間前、一次試験会場で不気味な奴に怒られてる奴を見かけた。帽子を被って眼鏡をかけてる女。一瞬彼女から懐かしい匂いがしたが、あんなピンク髪の女は覚えがないので直ぐに視線から逸らした。それで次に視界に入ったのが、俺と同じくらいの歳の子供。それでも仲間がいるみたいだったからまた視界から外す。まあマラソンが始まって暫くしてからすぐ、一緒に走ることになるのだけど。
今思えばヒントはあった筈だ。それでも気付けなかったのは、多分、認めたくなかったからなのかもしれない。
「ゴンって、なんか特訓とかした?」
「え?うん、したよ、三年くらい。俺の師匠スパルタでさ、大変だったよ」
「へえ、師匠ってどんな?」
「うーん、適当で気まぐれで大食いだった」
一瞬、姉の顔が脳裏を過ぎった。でも彼が言った師匠の容姿、というより髪の色でその考えは捨てる。染めた、という選択肢もあっただろうに。
「なんだよゴン、女に教わったのかよ」
「俺の師匠凄く強いんだよ!レオリオなんか片腕で倒されちゃうよ」
「んなわけあるかっつーの、せめて両腕だ」
「そこか」
暫く走るといつの間にかレオリオとクラピカがいなくなっていた。まあ今先頭だし、仕方ないか。
「キルアは何でハンターになろうと思ったの?」
「え?あー…、まあ…」
姉貴を探す為。
そう言うとゴンは俺と似てるね、と言って笑った。そういや、親父を探すって言ってたな。
「見つかるといいね」
「…お前もな」
この数十分後、俺は姉とお世辞にも感動的とは言えない再会を果たすのだった。
「次何するんだろーね」
「さーな、……あ、ゴン!」
もう戻って来れないと思っていたから、正直嬉しかった。勿論、もうどこにも行かないように姉の手を掴んで彼等の元へ行く。彼女の「あ」という声には気に止めなかったが、こちらに向いたゴンのなまえさん!という叫びに足が止まった。
「……?なんだ、ゴン、知り合いか?」
「うん、ほらさっき言ってたでしょ。俺の師匠」
もしかしてとは思ってたけど、帽子と眼鏡付けてたからわかんなかったや。
そりゃいちおコレ変装だし?
あははははと笑い合うゴンや姉貴意外、目を丸くして固まる。勿論俺も例外じゃない。…いや、ゴンの話を聞いてから、もしかしてとは思っていたけど。ちょっと、羨ましい、なんて。
「…で?キルアとお師匠さんとはどういう関係で?」
「ん?あー、初めまして。聞いての通りゴンの師匠であり、またキルアの姉であります、なまえと申します。二人がお世話になってるみたいでねー、ありがとう!」
「え!なまえさんが!?」
「私はクラピカという。いえ。私も彼等には助けてもらっている。礼を言うのはこちらの方だ」
「俺はレオリオ。思い出したぜ、なまえ一次試験会場で不気味な奴に怒られてただろ」
レオリオがそう言うと、姉貴は苦虫を噛み潰したような顔をした。彼女が言うには、301番とは知り合いらしい。いつの間にあんな怪しい奴と知り合いに……。
「…キルア、お姉さん見付かってよかったね」
「あ、えーと、……う、ん。まあ、な」
くそう、顔の熱が引かない、畜生!
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