「…………ひぃっ………!……っば、化け物………っ!!」
「え、化け物?僕が?そんな大層なものじゃないよ。僕は普通以下の人間さ!もし僕が化け物だったら他の人は魔王だね!そして君は化け物に心を折られた人間だ。残念でした。でも大丈夫!実はこの中で人間が一番有望なんだよ?自信持ちなよ。そして僕は優しいからね、一人の女の子を集団で襲っちゃう下衆野郎でも殺しはしないよ。もし間違って殺っちゃってもなかったことにしてあげるから!だからこれからはもう、女の子を襲うときは了承を獲てからにしなよ?わかった?」
…あり?白目向いちゃった。仕方ないなあ。男のくせに情けない。
僕は男のほうに向けていた体を半回転させて、壁際で小さくなって震えている女の子の方に向く。
「…………っひっ」
「もう大丈夫だよ、そんなに怖がるなって。君を襲ってた悪者は僕がやっつけてあげたからさ。あ、立てる?僕の手に掴まりなよ」
「………っ!……やっ………!」
彼女を立たせてあげようと手を差し出すと何故か拒絶された。どうしてだろう、助けてあげたのに。
「どうしたの?もしかして僕が彼等みたいに君を襲うと思った?…ならとんだ自意識過剰だね!安心しなよ、僕に恐怖で震えてる女の子を取って食おうなんて趣味は持ち合わせていないからさ」
出来る限りの笑顔で彼女に対応する。しかし彼女は安心するどころか僕の顔を見てさらに震え上がってしまった。
「………っ、ばけ…も、の………!」
「……………」
あーあ、傷付いたなあ!僕いつも笑顔でいるから勘違いされやすいけどさ、僕だって傷付くときは傷付くんだぜ?実はガラスのハートなんだ。ナイーブなんだ。脆いんだ。いくら僕でも許せるものとそうじゃないものがある。仏の顔も三度ってやつ?………いや、別に短気ではないんだけどね。傷付きやすいんだよ。嘘だけど。
顔がネジに成った彼女に話し掛けるも当然のように返事はない。彼女はたった今この世から消えた。人間最弱な僕の手によって。こんなに簡単に、人の命は消えるんだ。そして人間最低な僕の手によってその死はなかったことにもできる。至極、容易に。……ああ、そう考えると人の命って、
「………軽いなあ」
その夜、そこに一人の殺人狂が口に三日月の孤を描いてその現場を見ていたのは本人しか知らない。
彼女は彼の腕中で死を遂げた
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