今日は災難続きだった。
依頼主の追っ手に追われてあんな所まで来ちゃうし、挙げ句の果てに追い詰められてボコボコにされちゃうし、返り討ちにして疲れたから休んでたら何だか変な人達に目ェつけられるし、その人達にも捕まりそうになるし……。
溜息混じりに話すと、隣に座っている友達一号基変態奇術師が笑った。笑い事じゃないよ僕本気で疲れたんだから。
「クク、毎度君の不幸せぶりには驚かされる◆」
「僕も好きでこんな体質じゃないんだよ」
ヒソカはトランプをいらいながらでも、と続ける。
「でも、"その人達"から逃げ切れたなんて凄いじゃないか◆」
「………あれ、まさかその人達のこと知ってる?」
「クク…」
そのまさか◆というヒソカにたまらず溜息をこぼす。友達の少ない僕だからごちゃごちゃ言えないけど、やっぱり友達は選ぶべきだなと実感した。
「教えてよ、あの人達のこと。雰囲気からしてただ者じゃないでしょ。…あ、これから彼等のことについて聞くけど、僕のことは言わないでよ。なんか追って来そうだから怖いんだよねー。恐すぎて夜も眠れないよ」
「その割にはさっきまでぐっすりだったけどね◆大丈夫、安心しなよ。君のことは赤の他人だって言っておくから」
流石ヒソカ!流石不可能はない奇術師!君が友達で本当によかったよ!僕はやっぱり幸福ものだなあ!ヒソカみたいな素敵な友達に巡り会えたんだから。ありがとう!この恩は一生忘れないよ!
そう言うと彼は少し呆気に取られたような顔をした後、ククと喉を鳴らしてやっぱり君は解らないよ、と言った。
「そうだなあ、恐らく君の言う"あの人達"は、十中八九蜘蛛だろうね◆」
「蜘蛛?虫じゃないよね?…………あーー…少し聞いたことがあるなあ………。……盗賊、だっけ」
「おや、意外だね。知ってたんだ◆」
「まあね。僕も一応なんでも屋の端くれだし。一般常識くらいは弁えてるつもりだよ」
見直した?と聞くと、雀の涙くらいはと言った。あはは、やっぱヒソカは面白いね。
「珍獣の君ほどじゃないよ◆」
その言葉に少しムッとして、彼が積み上げたトランプタワーを倒してやる。するとピリッと殺気が彼から漏れたので、慌てて倒したことをなかったことにした。ヒソカの恐ろしさは身を以って知っている。
「………ふうん。こんなふうにも使えるんだ◆…そういえば蜘蛛のこと、もういいのかい?」
「ん?うん、正体がわかったからもういいよ。知った所で僕には到底敵わないし」
「そうかい、相変わらず潔いね。好きだよ、君のそういうところ◆」
うーん、君に言われてもあんまり嬉しくないなあ。でもどうもありがとう。そう言って立ち上がり、ヒソカに背を向ける。…さて、今日はどこ行こうかなあ。
「………あ、言い忘れてたけど。ボクも蜘蛛の一員だから◆」
「………………」
やっぱり、友達は選んだほうがよかったのかもしれない。
ルチフェルは誰だ
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