「おや」

「…………あり?」

連れてかれた先は僕達が座っていた場所とは反対側に位置する席。…に、何故か今は髪もメイクも落とした奇術師さんが座っていた。なんだこれ、仕事仲間とは聞いていたけど結構仲良いじゃないか。実は親友だったりする?

「ただ仕事の話してただけだから」

「いやだから読心術しないでくれる?プライバシーって知ってるかな。まあ問題はそれよりも何で僕をここに連れて来たかだけど。誘ってくれたのなら悪いけど、僕にもちゃんと連れはいるからさ。気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう」

それじゃあね、と言って翻す。も、あれ、背中に違和感。なんか腰にロープ巻いて繋がれてる感じがするのはなぜだろう。凝する?するか?…いや、しなくても分かってるけども。分かってるけどなんだか悔しいから分からなくていいや。頑張って引きちぎって、何事もなかったかのように戻ってやる。

「ボクのオーラはガムとゴム両方の性質を持つ◆」

「いや知って………あああ言われちゃった畜生悔しい!分かってたけどさ、そこは抜け出そうと頑張ってる僕に免じて黙って取ってくれよ」

ヒソカはクククと笑うだけで"伸縮自在の愛"を解いてくれる気配はない。…ん?そもそも僕は何で二人から逃げようとしてるんだ?別にいいじゃないか、ヒソカは僕の友達一号だし、イルミだってニューフレンドじゃないか。逃げる必要ないよね。うん、ない。逆に、戻ったらフィンクスの鉄拳を食らうことになるだろうし。ここのが安全じゃない?

「…と、言うことで。やっぱり逃げるのはやめてお邪魔させて頂くよ」

「そう、よかった」

「なまえ!」

「………あ、いたっ」

ああ、さっきまで警戒してた筈なんだけどなあ。早速眉なしの鉄拳を食らってしまった。ドリンクバー取りに行くのにどんだけ時間かかってんだよ!って、何でヒソカがいんだ!…とか、相も変わらず騒がしい。円して僕を探すなら、もうちょっと状況把握してから来てほしいな。

「あー、僕これから彼等と食べるから先に帰ってていいよ。僕のことに構わず先に行ってくれ!」

「てめ、最後のが言いたかっただけだろ」

帰るぞ、と言って歩き出すフィンクスに引きずられる僕。やっぱそう簡単に蜘蛛からは逃げられないなあ。彼等に捕まった僕はさながら蝶か。…なんてね、そんな綺麗なものじゃないけど。

「……蛾、かな」

「あ?何が」

何でもないよー。
後ろに手を振るとヒソカが振り返してくれた。イルミはこちらをじっと見た後、ぷいとヒソカの方に向いて何か言っている。うーん、聞き取れない。

「てめー、油断も隙もねえな」

「えー違うよ不可抗力だよ、連れてこられたんだ。じゃないとあんな恐ろしい場所になんか行くかよ。フィンクスに会えて良かったー」

「あーはいはい」

最初に宣言した通り、金を払わず店から出る。至極自然に出たものだから、馴れてるのかと感心しながら同時に呆れた。流石盗賊だなあ。店員はいつ気付くのかな。

「あ、おかえり。よかったー、なまえあんまりフラフラするなよ」

シャルナークの困ったような笑顔を見て、あの時、ヒソカやイルミから逃げようとした理由が何となく、わかった気がした。…あれ、この感情はなんだ?




「…ヒソカ、帰してよかったの?」

「ん、フィンクスが殴ってくれたからいいや◆」


ツァーリズムの崩壊


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