プルルルル、プルルルル、
片手にケータイ、片手にレモンティー。別にレモンティーが好きな訳ではないけどね。なんか優雅じゃん。恰好いいじゃん。別に好きではないけど。寧ろ苦手だけど。

「………あ、もしもしヒソカ!?やっと繋がった!今どこだよ、ちょっと一発殴らせてくれな」

『誰?』

「ごめんなさい、間違えました」

いけないいけない。怒りと悲しみでつい番号押し間違えちゃったよ。やば、僕今すっげー恥ずかしい。笑ったかな?引いたかな?うわー、これは立ち直れない。どうしよ。一生の不覚だよ。レモンティー片手に間違い電話って。よかったー、今この場に誰もいなくて。いたらかっこうの笑いの的にされてたところ…

ピピピピ……

「!?」

一人肩身の狭い思いをしているところに、突然携帯電話の機会音が鳴り響いた。
お?電話?知らない番号。もしかして間違い電話かな。よし、自分の失敗は棚に上げて思いっ切り笑ってやろう。僕の過失がどうでもよくなるくらい大いに罵ってやろう。
通話ボタンを押す前にレモンティーを少し口に含む。げ、実は僕紅茶自体苦手なんだよなー。何でレモンティーなんか煎れたんだろ。

「…はい、僕です。突然だけど君間違い電話だよ〜!残念でした!なんでわかるかって?そりゃあこのケータイは僕のプライベート用であって、この番号を知ってる人はこのケータイに登録してある人しかいないんだよね。だから登録してない君からの電話は十中八九間違い電話なんだ。あっはっは、馬鹿だね〜、君。汗顔の至りって感じでしょ!大丈夫だよ、君みたいな愚かな奴は世界中に沢山いるから!自信なくすことなんてない!僕が保障する!」

『……自分の失敗は棚に上げといて何それ。殺しに行っていい?』

わお、怖い怖い。……じゃなくて。なんと、電話の主は僕が間違い電話をしてしまった相手だった。どうしよう。穴があったら入りたい。切実に。お願い、このレモンティー全部飲むから今の忘れて。

『それよりさ、お前ヒソカと知り合いなの?』

「え?まあ……友達だけど。…あれ?君も?お互い大変だねえ、あんな変な友達を持って。お陰で思いっ切り赤っ恥かいちゃったよ」

『いや?友達じゃないよ。確かに変だけど』

ただの仕事仲間。
成る程ねー。ところで何でわざわざ間違い電話相手にかけ直してきたの、と問うとなんとなく、と返ってきた。え、何この人超マイペース。ヒソカのあれで言うとあれだ、この人きっと操作系。

「…じゃあ、特に用がないなら切っていいかな?僕今までので結構心ズタボロなんだよね。間違い電話だわ、レモンティーだわで。ブロークンハートだよ。今すぐ泣きたいくらい」

『(レモンティー?)うん、いいよ。…あ、俺殺し屋やってるからさ、殺したいやついたら連絡しなよ。この番号でいいから』

「そう……じゃあヒソカ見付けたら一発殴っといて。いろいろと虚しい思いをしたのは彼のせいだからさ。あ、匿名希望で殴ってね。仕返し怖いし」

わかった、それじゃあね。
そう言って間違い電話相手、基殺し屋さんとの電話は終了した。僕のケータイの数少ないアドレス帳に、殺し屋さんの項目が増えた今日この日。
さて、悲嘆にでも暮れようと思っていたら、タイミング悪くフィンクスが部屋から戻ってきてしまった。眉なしこの野郎、レモンティーぶっかけてやろうか。そんな命知らずなことはしないけど。

「なんだお前、レモンティーなんか飲むのか」

似合わねー、と笑って外に出て行ったフィンクスに怒りを通り越して泣きたくなった。


ミルクレモンティーの憂鬱


prev next



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -