初めの出会いは最悪だった。
気分の悪い笑顔を貼付けて話す様は、見ているだけで脂汗が吹き出たくらい。挙げ句の果てには不意打ちを食らわされるし。もう二度と会いたくないと思ってしまった。
そして二度目の出会いは驚きだった。
仕事中、フィンクスがそいつを担いで戻ってきたときは誰もが目を見開いた。でもその時のなまえの雰囲気は、初め出会った時とは大分違って気持ち悪さがなかった。
恐らく彼は初めて会った日のあと、俺達のことを誰かから聞いたんだろう。きっとあの日の不気味さは彼の警戒心からきて、彼なりに自分の身を守ろうとしたのだ。現にあの日俺達はフィンクスが攻撃されたのに、雰囲気に負かされて出来なかった。だが初めての人に対して常にああだったら一般人は彼と話す以前に心が折れてしまうだろう。なまえと面と向かえる人物はなかなかいない。それゆえ彼は今までたった一人で、孤独に生きてきたに違いない。
大して強すぎる訳でもないのに"恐怖"され、隔離される哀しい生き物。"友達"にこだわる彼はきっと、そこから来ている。



「ダウト!」

「あーーまた負けた!」

「なまえが来てからシャル負けなくなったよね」

「それでもビリから二番目だけどな」

シズクとフランクリンが言うのを聞いて俺よりも弱いってどんだけだよ、と笑うと、なまえは大の字になって倒れる。
どうして僕は勝てないんだろうなあ、と喚く彼は本気で悔しがっていた。

「どうしたの?勝てないなんて今更でしょ」

「んーーー、僕ってさ、色んな面において勝てた覚えがないんだよね」

色んな勝負に負けて、逃げて、負けて、負けて。
そのあとはいつも一人で打ち拉がれて。悲しくって、笑って。

「でもいくら笑ったって、やっぱり一人は寂しかったなあ」

そう話すなまえは、まるでただの子供のようだった。
負けて悔しがっていたと思ったら悲しそうにして、泣きそうな顔をしている。ただそれは"普通"の喜怒哀楽であって。今の彼は決して、他の人が思う"恐怖"なんかじゃない。
−−−だからさ、凄く嬉しかったんだよね。

「シャルナークたちと友達になれてさ」

「…………俺も、安心したよ」

君が、弱いただの人間だとわかって。
そう言うとなまえはなにそれ褒めてるの?と言って笑った。


愛を知らない子ども


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