今日の依頼先はある美術館だった。まあ美術館は表の顔で、裏では汚い仕事ばかりやっている組織である。
そこでは貴重価値の高い絵画を手に入れたはいいが、その大半が血で汚れてしまっており、そこらの絵画修復士では復元不可能となってしまっていた。
「……そこで、僕にこの汚れをなかったことにしてほしい。と」
「は、はい。…可能、でございますでしょうか……」
「あーはいはい、任せてよ。僕に不可能はないんだよ。…なんて言うとどっかの変態奇術師みたいになるからやっぱり前言撤回ね。僕にも出来ないことはあるよ、まあ今回のはばっちりだから安心してね」
ありがとうございますと頭を下げるオーナーを横目にさっさと大嘘憑きを発動する。やってることはなかなか凄いのに、作業は呆気ないよな〜。今度ポーズでも考えてみようか。
「…!おお……!!素晴らしい!これはこれはなまえ殿ありがとうございます。こちらが代金となっております。…本当に現金で宜しいのでしょうか…。小切手でしたらもっと支払えるのですが……」
「あーー、いいよいいよー。僕現金派でカードとかは使わない主義だから。やっぱ世の中信じれるのはお金だよね。……それじゃ、僕は退散するよ。またの御利用心からお待ちしております」
マニュアル通りの決まり文句を吐き捨て、部屋をあとにする。……これからが忙しいんだよなあ。
「……さて、そこを通して貰おうかな」
目の前に立ち塞がっている男達に向かって具現化したネジを構え、それと同時に相手も剣やら銃やらを構える。面倒臭いっちゃあありゃしない。たまには普通に帰らせてほしいよなあ。
そう思いながら向かって来る前にネジ刺しにする。不意打ちは基本だよね。
(……今日は少ないなあ…?)
今のところ襲ってきたのは最初だけでその後はスムーズに進めている。
ただ単に刺客が少ないだけか、若しくは別の、
「…えーと、こっちで合ってる…………あ」
「あ」
奇襲にあっているか。
「…………っ!!!てめ…!!」
「やば」
なんと、目の前にはいつしかに最悪な出会いをした眉なしお兄さんが現れ、問答無用に追いかけ回されることになってしまったのだ。こんな不幸有り得ない。
「………っ、ちょっ、眉なしお兄さん!仕事はいいの!?なんか盗みに来たんでしょ!僕なんか追っかけてる場合じゃないよ!」
「フン、この前テメェのことを団長に話したら、もし仕事中に見つけた場合盗みそっちのけでお前追っかけていいって指示が出たんだよ!………っつかやっぱり俺らの正体知ってたのか」
「そんな理不尽な!」
そんな叫びも虚しく、蜘蛛の一員相手にガチの追いかけっこで勝てる筈もなく、一分もしない内に呆気なく捕まってしまうのであった。
まもなく地獄行きの電車がまいります、
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