この前の仕事から戻ってきたフィンクスたちから面白い話を聞いた。文献でしか読んだことのない、可負荷の能力を持った者に会ったそうだ。是非手に入れたいと思い、シャルに探させた。
しかし彼が言っていたらしいなんでも屋の情報は素晴らしいくらいに隠蔽されており、どれが本物の情報か、絞るにはガセネタが多過ぎた。
だが駄目元でヒソカに尋ねてみたところ、予想外にもその人物とは知り合いだと聞かされた。冗談だと思ったが、彼の言う可負荷の青年の特徴はマチに聞いたそれとぴったり一致していて驚かされた。
何故今まで黙っていたと聞くと、聞かれなかったからと返された。まあそれもそうだが。

「会うことは出来ないのか」

「うーん。彼多分旅団から逃げつづけると思うよ◆」

なら俺はその青年に会っていないから大丈夫だと言うと、それなら彼に連絡してみると言って電話を切った。
…ヒソカの友達か……。…まずは可負荷の力を見て、それから決めよう。





「何か僕に話でも?」

そう問う彼に鳥肌が立った。ピリ、と殺気を紛らせてこちらに向ける笑顔は、正しく可負荷のものだった。気味が悪い。
丸いテーブルを挟んで右側に座るヒソカは、何が面白いのか喉を鳴らせて笑っている。類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。

「別に話なんて大したものはない。…しいて言うなら君の可負荷の力が見たい」

そう言うと彼は、ああそういうことと言って笑った。

「いいよー、友達だもん。でも結構作業地味だからなあ。…あ、それじゃあ」

一旦この店にいる人達皆殺しにしようか。
なまえはどこからか巨大なネジを取り出し(恐らく具現化系の念能力だろう)、一瞬のうちに店内を血の海にした。まあ俺やヒソカから見たら普通のスピードだが、一般人には目に追えないだろう。戦闘力は中の上なところか。まあ彼は不意をつくのが上手いようだが。
中には息絶えていないものも過半数はおり、そこまで広くない店内に悲鳴が響き渡り少々不快だった。

「それくらいなら俺も手伝ったのに」

「…いや、駄目だよ。僕以外が殺しちゃったらなかったことに出来ないからね」

なまえはマジシャンのようにカウントダウンを始め、ハイ、という掛け声と同時に店内にあった地獄絵図は、まるで今まで何も無かったかのように消え失せる。残っているのは被害者の悲痛な表情だけだった。

「クク……キミ、ボクよりたち悪いんじゃない?」

「え?そうかなあ。…そんなことより、早くこの店から出なきゃ面倒臭いことになるぜ」

そう言う彼の視線の先には何やら青い顔をして電話をする店員の姿。恐らく警察にでも連絡しているのだろう。確かに面倒臭い。

「……それじゃあ、会ったばっかだけど、僕これから仕事があるからさ。おさらばとするよ。…あ、あと連絡先ならヒソカから聞いといて!じゃーねー」

店から出てすぐ、なまえは思い出したようにそう言い残して去って行ってしまった。
彼の後ろ姿を眺めていると、隣でクツクツと笑っている声がしてそちらを見れば、ヒソカがどうするの?と問うた。

「………勿論、手に入れる」

「…………そ◆」

頑張ってね、と笑ったヒソカは何を考えているかわからないが、取り敢えずこの状況を楽しんでいることだけは理解できた。


ぼくと踊らないかい


prev next



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -