中に入ると新たに三人ほど人がいた。
胸元をやけに露出したグラマーなお姉さんと目付きの鋭いお姉さん、爽やかルックスの金髪お兄さん。私達が入ってくるや否や三人は驚いたように目を丸くした。
早速黒い人はグラマーお姉さんに何か話すと、私を近くの瓦礫の上に座らせた。

「シャル、何か身体を拭くものを持ってきてくれ」

「…りょーかい」

黒い人とシャルと呼ばれた爽やかお兄さんがどこかへ行くのを眺めていると、グラマーお姉さんと目付きの鋭いお姉さんが近寄ってきて身体を強張せる。
それを見てスーツの方は薄く微笑んだ。

「大丈夫よ、そんなに怖がらないで。少し質問するだけだから」

そう言ってお姉さんは私の肩に手を乗せ、どうしてこんなところにいたのと問い掛けた。
…どうして、と言われても。自分でもどうしてかわからないうえに書くものがないから答えようがない。黒い人はちゃんと話してくれたのだろうか。
返答に困っていたら、グラマーお姉さんは驚いたように目を見開くと、私の肩に乗せた手を下ろした。

「…パク?」

目付きの鋭いお姉さんがパクと呼ばれたお姉さんに問い掛ける。
するとパクさんは困ったような顔を浮かべ、言った。

「ええ………彼女、異世界から来たみたい。この子自身もよくわかってない様だわ」

それを聞いてお姉さんも目を見開いた。
え、なんでわかったんだろう。よくわかんないけどこれは楽だ。にしても異世界って……。
そこにシャルさんが戻ってきてはい、と私にバスタオルを渡してくれたことにより、思考が途切れた。
お礼に頭を軽く下げるといいよいいよと言って私の頭にぽんぽんと手を乗せた。
頭を撫でられたのはいつ以来だろう。もしかしたら初めてかもしれない。
初めてに近い行為をされて、嬉しさに涙を流すとシャルさんはぎょっとしてあたふたしてしまった。

「あっ?ちょっちょっ……!??」

「シャル、なに泣かせてんのよ」

「最低ね」

「えっ!?違っ」

「……何をしているんだ」

「あ!クロロ!俺違うから!」

黒い人はクロロというらしい。
先程までの緊迫した空気とは打って変わって明るい雰囲気に肩を揺らして笑うと、三人はまた驚いたようにこちらを見た。
何か変なことでもしたかと首を傾げると、クロロさんが小さく微笑んで一枚の紙とメモ用紙、ペンを渡した。

「………?」

「この世界の文字のあいうえお表だ。悪いがこれを見ながら筆談してくれないか」

成る程。私は素直に頷いてそれらを受け取った。にしてもこんな文字見たことがないから異世界というのは本当なのかもしれない。
膝の上にメモ用紙を置き、顔を上げるとクロロさんは柔らかい表情でこちらを見ていた。

「それじゃあまず……名前は?」

一瞬癖で日本語で書こうとしてしまい、焦ってクロロさんに貰ったあいうえお表を見る。見たところ手作りのようだが彼が作ったのだろうか。それならばお礼も言わなくては。
私は慣れない手つきでペンを走らせた。



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