昨日、こってりシャルナークさんに扱かれた私は筋トレが一通り終わった後ぷっつりと意識が途絶えてしまった。その後の記憶は全くないけれど、恐らくシャルナークさんが運んでくれたのだろう。目を覚ますと既に見慣れた、自室の天井が視界一杯に入った。日はとっくに昇っていて、多分昼近くだ。だとしたら丸一日眠っていたことになる。シャルナークさんには悪いことしたなあ。…重くなかったかな。

「………っ、」

時間確認のために起き上がろうとしたところ、体が思うように動かない。少し腕を上げようとしただけでそこに激痛が走る。なんだこれは、こんなに酷い筋肉痛は初めてだ。痛い。痛い。声も出せないタチなので人も呼べない。…ああ、呼ぶ必要なんてないのか、このまま寝たふりをしていればいい。お腹空いたけど、きっと寝てしまえばわからない。
再び目を閉じようとした刹那、ノックも無しに部屋の扉が開いた。こうやって入ってくる人は大抵強化系の方々だろう。憂鬱に目を開けると予想通り、そこにはフィンクスさんの顔があった。

「よお、目ェ覚めたか。ほんと、あんだけで倒れるとか軟弱な奴だなー。…ほら、起きろよ。メシできてるぜ」

そう言っても起き上がろうとしない私を不思議に思ったのか、彼は部屋にまで入ってきた。私の顔を覗いて、筋肉痛?と聞くのでコクと頷くと、フィンクスさんは少しポカンとした後腹を抱えて笑い出した。わ、笑い事じゃないのに…!

「わりーわりー、いやー、起き上がれねーくらいの筋肉痛って初めてだからよ」

しょうがねえな。そう言ってフィンクスさんは私に被せてある布団を剥ぎ取り、私の背中と膝下に手を入れた。…え、ちょっと待って、これってアレだよね。女の子が憧れる、あの………

「−−−っ!!」

「…あ、わりい、痛かったか」

生きている内にされるとは思いもしなかったお姫様抱っこに、今は恥ずかしさよりも痛みが勝った。それでもフィンクスさんは我慢しろと言って歩き出す。咄嗟に彼の服を掴むが、またそこが痛んで涙目になった。こ、これはご飯もまともに食べれないんじゃ…。
そんなことを考えながらうなだれていると、上でフィンクスさんが残念だな、と言う。何が?と首を傾げると彼は、今日の当番俺なんだと話した。だから彼が部屋まで迎えに来たのかと納得しながら、心の中で安堵する。もし今日がフェイタンさんだったら、筋肉痛だろうがなんだろうが地獄の特訓をさせられていただろう。

「……あ、フィンクス!何で名前を横抱きしてんのさ!」

「あ?コイツ筋肉痛で動けねーんだと」

それを聞いて謝ってくるシャルナークさんに首を横に振る。確かに、こんな提案をした彼を恨んでないと言えば嘘になるけど、筋肉痛になったのは自分の日頃の運動不足のせいだ。半分は。だからシャルナークさんが謝ることはない。…そう言いたくも、腕が動かなくて伝えられない。いっそのこと声に出してしまえば楽なのだろうが、そんな簡単なことが出来ない私は一体何なのだろう。いつからこんな面倒臭い人間になってしまったのか。

「………?」

ふと視線を逸らすと、その先にはフェイタンさんがいた。彼はニヤニヤしながら手招きをしていたので、私は首を傾げる。すると彼は念文字で、食べれないだろうから食べさせてやるとやけに達筆な字で書くものだから、私は全力で首を横に振らせて頂いた。ああ、首が痛い。



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