「バイト…か、」

思い立ったが吉日、ということで早速クロロさんに相談してみることにした。目の前の彼は顎に手をあて考えるふりをしている。そんなに難しいことなのかなあ。

「駄目だよクロロ!この前だって襲われたばかりじゃないか。ヒソカが助けてくれたみたいだけど」

「…それもそうだな」

「!」

クロロさんは私の方に向き直り、すまないなと言って私の頭の上に手を置いた。そんなそんな、これ以上彼等に迷惑はかけたくないのに。襲われても助けてくれなくていい。仕事先だって自分で探す。だから、これ以上、私を無能な存在にしないで……!
そこまで考えて、やっぱり私は自分のことしか考えてないんだなあと思った。相手に迷惑をかけないと言いながらも、本当は自分が可愛いんだ。迷惑をかけないことで、人間関係に於いて自分は常に安全地帯にいようとしている。馬鹿馬鹿しい自尊心。自己中。厭らしい。考えれば考える程、自己嫌悪に堕ちていく。…それでも、何年もかけて培われた私という性格は簡単に変えられるものではない。私は必死に首を横に振った。なんと滑稽で愚かな動作なのだろう。それでもアイロニーな私の性は止めることを知らない。
するとクロロさんが私の名前を呼んだので、そちらに向く。当の彼は少し真剣な顔をしていたので、やっぱり駄目かなあと不安になった。

「…自分の身は自分で護れるようになったら、バイトの許可を出す」

その言葉にシャルナークさんは眉を寄せたけど、私にとってこれ以上ない言葉だった。自分の身を自分で護ることが出来れば、彼等に守られることもなくなる。それは必然的に、彼等に迷惑をかけないという事実に繋がるのだ。そうするには恐らく念の修行をしろということなのだろう。まあそれだけでは足りないかもしれないから…毎日筋トレ十回ずつしようかな。

「………名前、特訓って何するかわかってる?」

"毎日二時間瞑想して、筋トレ十回ずつします"

そう書いたメモを見せると、シャルナークさんは一瞬ポカンとした後、ぶっと吹き出した。十回って…!と言って腹を抱えて笑う彼に首を傾げる。やっぱり十回じゃ少ないかな…じゅ、十五回くらい……?

「…くす、そんなんじゃいつまで経っても強くなれないわね」

うわああ、パクノダさんまで……。じゃ、じゃあ三十回頑張ろうかな…。でもマッチョはやだなあ。

「ふ…、まあ自分のペースで頑張ればいいさ。お前がいいなら俺が扱いてやってもいいが」

口端を上げながら言う彼に、全力で首を横に振る。それでは自分の身を護る前に死んでしまいそうだ。
それならば何回くらいすればいいのか聞くと、最低五百回くらいかしら…というパクノダさんの言葉に眩暈がした。十七倍…!
マッチョどころじゃない!…あれ、でもパクノダさんやマチさん達はマッチョじゃないよなあ。寧ろ羨ましいくらいの…。

「…このままじゃ全く強くなりそうにないからさ、明日から当番制で名前を扱く?」

そう言うシャルナークさんの悪魔の提案に、クロロさんやパクノダさんは成る程と納得した。…え、本当にするの?



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