アジトに戻ってきた頃には七時を回っており、風呂に入って暫くしてから仲間の皆が帰ってきた。
毎回仕事が無事終わる度に打ち上げをしているらしく大量のお酒とつまみをぶら下げて、皆は早速馬鹿騒ぎを始めてしまった。

「名前も飲むか!?つか飲め!」

「ウボォーやめろ、名前未成年だろ」

酔っ払ったウボォーさんをノブナガさんが押さえ込んでるのを見ながら、貰ったオレンジジュースを口に運ぶ。甘酸っぱい酸味が口に広がって普通に美味しい。

「名前」

「……!」

ふと、呼ばれた声に振り向くとクロロさんが缶ビール片手に立っており、なにかと首を傾げると彼はポケットから何が取り出し、やる、と言った。

「……!」

「まあ…ただのペンだ。仕事先にあってな」

「またまたー!それ探すの結構大変だ……っぶへ」

クロロさんに殴られるシャルナークさんを横目に、貰ったペンを見遣る。少し大きめの、私にはよくわからないけどアンティークな品物なのかな。
取り敢えずペンの価値云々よりも、危険を侵してまで私の為に探してくれたことに心の底から歓喜した。
感涙を堪えながらありがとうと礼をする。クロロさんはいい、と言って頭を撫でてくれた。

「そういえ…」

「お!それ貰ったか!大事にしろよなー、そんなちっせえから探すの大変だったんだぜ」

「……っ!おい、ウボォー!」

「……?」

何やら周りの皆が馬鹿騒ぎをやめ少し焦ったような顔をしだし、対するウボォーさんも大きな図体に似合わずあたふたし始めてしまった。どうしたんだろうとポケットに手を入れようとしたところ、自身の異変に気付く。

(……!?何これ………)

「やばいやばい精孔開いちゃったよウボォー何考えてんの!?」

「いやすまんついオーラを纏ったまま……」

「ついじゃない!…名前!その光を自分の体に留めるイメージで!」

じゃないと死ぬよ!
マチさん達の見たことのないような、焦燥にかられた表情を見て冗談ではないことを物語っている。
死ぬ………と、言われても。留める感じって………っ、わかんないよ、これが念ってやつ?どうしよう、無理だよ私にはできな−−−

「大丈夫、落ち着いて」

クロロさんの落ち着いた声に、周りの皆も徐々に平生を取り戻す。これが団長のカリスマ性というものなのかな。

「心が乱れていては、出来るものも出来なくなる」

深呼吸を繰り返し、目をつむる。そこは子宮の中にいるみたいに温かく、心臓の鼓動だけが聞こえる。死の淵に立っているにも関わらずこうしていられるのは、優しく抱きしめてくれるクロロさんが私の不安・恐怖を包み込んでくれているお陰でもあった。
また、これが出来なければ皆ともう一緒にいられないし、彼等に迷惑をかけてしまうという思いもあった。失敗して死んでしまったら、残った死体を彼等が片付けなくてはいけない訳だし。死んでも尚迷惑はかけられない。絶対、絶対に。

「……名前!」

「…………」

(…………出来、た…?)

私の体から絶え間無く放出されていた光は見事に自身の周りに留まっていた。
現状についていけてない私を置いて、シャルナークさん達はよかったよかったと私の頭を撫で回す。ウボォーさんなんかは九死に一生を得たような顔をしていた。
最後に満足そうに微笑んでるクロロさんを見て、私は意識が途切れた。



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