目が覚めると、見慣れた部屋の天井が視界に入った。窓から見える空は赤く染まっていて、烏が巣へ帰ろうとしている。
あれ、私なんで寝てたんだっけ。寝起きでまだぼうっとしている脳をなんとかフル回転させる。街に出掛けて本屋に寄って、それから……徐々に思い出してそれと同時に顔が青くなっていくのを感じた。震えを堪えるように布団のシーツを握り締める。…あれ、そういえば私はどれだけ眠っていたんだろう。あの時も夕方だったから………

「名前、丸一日寝てたんだよ」

「……!」

突然第二者の声がしたと思って振り向くと、扉の前にマチさんが立っていた。
……丸一日も?
わわわ、どうしよう。そんなに寝てたなんて。ということは皆仕事に出掛けたのかな。マチさんは私が目覚めるのをずっと待っててくれたんだろうか。…そういえば私を助けてくれたピエロさんはどうしたんだろう。もしかして幻覚?ん、あれ、紙はどこだろう。ああ、ペンも。…あ、あった。机の上。
それらを取りに行こうと、ベッドから出ようとしたらアタシが取りに行くとマチさんに止められた。もろもろ申し訳ないな、自分の不甲斐なさに泣けてきた。

「はい。…まあ、あんたの言いたいことはわかるよ。名前を助けてくれたヤツに礼を言いたいんだろう?」

その通りだと、お礼を含めて頭を下げたら軽く溜息をつかれた。何か変なこと言ったかな。

「…アイツはアタシらの仲間でさ。ほら、十三人いるって言ってたけど、名前まだ十二人しか会ってないでしょ」

マチさんは私の隣に腰掛け、ピエロさんの説明をしてくれた。彼はヒソカさんと言うらしく、二年くらい前に新しく入ったはいいが、無断で仕事を休んだり何考えてるかわからないわであまり団員内での評判はよくないらしい。対するマチさんもよくは思っていないようだ。…でも。

"ピエロって大方、何考えてるかわからない人が多いですよ"

そう書いて見せると、マチさんは目を丸くした後、物凄く呆れたような、嫌な顔をした。

「名前はアイツを知らないから…。実際会ってみればわかるよ。…まあ、今はもうどっか行っちゃったけど」

え、皆と一緒に仕事へ行ったんじゃないんですか?と問うと、彼は私をここに届けたらすぐにどこかへ行ってしまったらしい。

「ほんと、一々アイツの言うことを真に受けてたら身が持たない」

あんなに冷静なマチさんを苛立たせていまう人物に、ほんの少し興味が湧いたことは黙っておこう。

きゅるるるる…
「!」

マチさんの話(愚痴とも言う)を聞いていたら、少し緊張が解れたのか、盛大に私のお腹の虫が鳴り出してしまった。
彼女は一瞬固まった後、くくくと笑い出して、私は穴があったら入りたい状態になった。

(恥ずかしすぎる……!)

「ふふっ………ごめんごめん、そういえば名前丸一日寝てたから何にも食べてなかったんだったね」

どこか食べに行こうかとマチさんは私の手を引き、立ち上がる。私はそれに黙ってついていく。マチさんは気にするなって言ってくれるけど、気にしない方が可笑しい!

(……そういえば、マチさんがあんなに笑ってたの初めて見たな)

彼女の楽しそうな横顔を見て、何だか私まで嬉しくなった。



< >
戻る

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -