この街に来たのは偶然で、そこを通ったのも気まぐれ以外のなにものでもなかった。
しいて言うなら青い果実探しで、大通りは人が沢山いて面倒だからで、太陽が暑かったからで。…とまあ理由を挙げるならばそんな感じだ。別に女の子が集団で襲われいるのをわかって、この路地裏に入った訳ではない。

(………あー、邪魔だなあ…◆)

女の子は口を押さえられて壁に追いやられている。ここから見ても恐怖で震えているのがわかった。
だが今は血を浴びたいとかそんな気分ではない。まあそんな気分だったとしても、女の子が助かることはないのだが。
ご愁傷様、と心の中で呟き、彼等に背を向けた時だった。

「これで旅団はおしまいだ」

自分が所属する、正しく言えば所属したフリをしている組織名が出てきて、ふと足を止めた。
振り返ると、女は涙を流してひたすらに震えている。そんな彼女であのA級首をどうのこうの出来るというのか。
一般的に見れば出来る訳がない。…だが、実は彼女には何らかの力が眠っているのかも。
俄然、興味が湧いた。周を纏ったトランプを取り出して彼女を押さえ付けている男の頭を狙う。不意打ちとはいえ、この程度を避けられなくてよくもあんな大口が叩けたものだ。その間も女は悲鳴一つ出さず縮こまっているものだから、もしかしたら力なんて微塵もないのかもとか思った。が、やはり気になるものは気になるので。震えている彼女を、泣いている赤子をあやすように背中をぽんぽんと叩いて落ち着かせる。
そうしている内に、街の近くにあるであろう旅団のアジトの場所を聞く前に彼女は眠ってしまい、自分で探すはめになった。



「………!名前!」

アジトを見付けて入っていくと、珍しく心配そうな顔をしたマチが駆け寄ってきて、それにつられて他の団員も来た。若干殺気をちらつかせながら。

「大丈夫、寝てるだけだよ◆」

「………名前に何したの」

「何で弱虫子がワタシ達のとこにいるてわかたね」

「(弱虫子?)まあまあ、そんないっぺんに聞くなよ」

「名前を離しなよ」

ボクが彼女を助けてあげたのに酷いなあ、と言うとどういうこと?とパクノダが問うたので先程あったことを話した。勿論パクノダに触れられながら。ボクって信用ないんだなあ。

「…ヒソカの言ってることは本当よ」

「………そうか。ヒソカ、礼を言う」

「いいよ◆それより彼女とは一体どういう関係?」

一気にこの場が緊張した。聞いてほしくないような、答えたくないような、そんな雰囲気。これはなんとしても聞かなければと思い、言ってくれなきゃこのコ連れて帰っちゃおうかなと呟くと、シャルナークが観念して話し出した。


「………と、いう訳。さ、話したんだからヒソカも離しなよ」

「…………ふうん…◆」

じゃあボクも暫くここにいようと言うと、不満という名の殺気が四方八方から溢れ出したのは言うまでもない。



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