明日は仕事らしく、クロロさん達はそれに関しての会議を始めた。私は彼等が何をしているのか知らない。教えてもらっていないし、なんとなく聞いてほしくないような雰囲気を出してるから聞こうとも思わない。それでも私にはなんとなく、わかっていた。だから敢えてそれには触れないように、自分から距離を置く。その度に彼等とは棲む世界が違うんだって再確認された。哀しいけれど、それでいい。

"街に出掛けてきます。夕方頃には戻ります"

そう書いた紙を瓦礫に挟んで置いておく。置き手紙をしていけば大丈夫だろう。
私は意気揚々と街に出掛けた。一度行っただけなので道を覚えているか心配だったが、私は自分で思っている以上に記憶力がいいらしい。迷わずあの時連れていってもらった街に着くことが出来た。
…さて、何しよう。本屋さんにでも行こうか。お金は持っていないから立ち読みしか出来ないけど。
それでも、やっぱり本は私に安らぎを与えてくれる。読んでいる間は他の人とは隔絶され、私だけの世界に浸っていられるから心地がいい。読書ほど、時間を忘れて没頭出来るものはない。


(……もうこんな時間)

気が付けば店内の時計の針は五時半を回っていた。空も太陽が沈みかけている。
急いで戻らねば、と思って慌てて建物の角を曲がった時だった。

「−−−!」

突然左の隙間から手が伸びてきて、私の口を押さえ、路地裏へ引きずり込んだ。
急なことに驚いて何も考えられない。何だ、何が起こったんだ。わからないのに体は勝手に震えはじめる。−−−っ怖い怖い怖い!

「−−お前、最近旅団にいるだろう」

「何でこんな女を置いてんのかわかんねーが、人質にはなるだろうぜ」

「これで幻影旅団はおしまいだ」

目の前に三人、奥に数十人と人がいる。彼等が何者かはわからないが、クロロさん達を狙っていることだけはわかった。どうしよう、私が弱いばかりに彼等に迷惑をかけてしまう。最低だ。私は最低でどうしようもない役立たずだ。彼等に迷惑をかけてしまうと考えていたら思わず涙が溢れてしまった。

「…あ?おいおい泣くなよ。大人しくしてれば何もしねーか…………」

「………!?」

突然、私の口を塞いでいた男がドサッという音とともに倒れる。頭にはスペードの4のトランプが刺さっていた。…刺さって、いた………?

「−−−−ッ!」

始めてみた、人間の死に際。体中の震えが止まらない。周りの男達は突然の攻撃に慌ててキョロキョロと敵を探していたが敵は見当たらず、彼等はどんどんトランプの餌食となってゆく。思わず目をキュッときつく閉じ、己を抱きしめて必死で震えを抑えようとするも収まらない。視界を閉じても断末魔は耳からリアルに伝わってくる。
もう限界だ、と思い意識を飛ばしそうになったとき、ふと、誰かに抱きしめられる感じがして目を開けた。

「大丈夫かい?」

それはピエロのような姿をして、優しく笑ってそう言った。
恐いもの見せちゃったね、と謝る彼が、先程のトランプを投げた張本人だろう。怖い筈なのに、抱き寄せられた体が思ったより温かくて本当は優しい人なんだと思った。
お礼を言いたかったのに、安心からか急に眠気が襲ってきて、彼の腕中で意識を手放した。



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