…なんだこれは。俺は幻覚でも見ているのだろうか。夢でも見ているのだろうか。
しかしどんなに目を擦っても頬を抓っても変わることのない光景。あの………あの、フェイが。あのドSのフェイタンが。例の喋れない女の子と、並んで座って一緒に読書だと…!?有り得ない!だってフェイは読書中に邪魔される事を極端に嫌う筈。俺なんか特別機嫌の悪いときに話し掛けて本気で攻撃されたからな。…それなのに彼女はものともせずフェイの隣で優雅に読書とは……気が弱そうに見えて実は大物だったのか!?だから団長も彼女の底知れぬ潜在能力に気付いてここに…!(あくまでフィンクス個人の意見です。)そうだ、そうに違いない!流石団長だ!惚れ直したぜ!俺は一生アンタについて……

「フィンクスは何一人でつっ立って百面相してんのさ」

「………!お、おう。シャル…」

うわ、考え事しすぎてシャルが近づいて来んの気付かなかった。
軽くショックを受けたが、シャルは構わずそれより、と顔を俺の耳に近付ける。

「名前、ちょっと涙目じゃない?」

「あ?」

言われて彼女を見る。……確かに、ちょっと涙目だし、たまに本から目を逸らして…って、

「……あれフェイの本じゃねーか!アイツ何読ませてんだ!」

「うわ、ホントだ。しかも彼女の本はフェイが読んでる」

どういうことだと頭を抱える。そもそも彼女の本は彼の趣味と全く違うだろうに。なんだ、名前はフェイの弱みでも握っているのだろうか。ならば是非とも教えていただきたい!でもそれを使って人を脅すような娘には見えないがなあ……。純粋無垢な女の子……

「フィンクス、全部声出てる」

「あ、まじ?それより助けに…」

「お前らさきから煩いよ」

「!」

二人の目の前にはいつの間にかフェイが。また気付かなかった。
どうやら俺達の会話は聞こえていたようで若干不機嫌オーラが出ている。フェイの後ろの方では、瓦礫に座ったままの名前が不安げにこちらを見ていた。

「悪かったよ。それより意外だね、彼女と仲良くなったんだ」

「まあね、案外趣味合うよ」

「……その割りには彼女涙目だったけどな」

それが面白いねと言う彼はやっぱりただのサディストだった。それでは名前はマゾなのだろうか。…いや、俺は純粋無垢な少女だと信じてやまない!
すると、フェイはもういいのか、見を翻して彼女の下へ戻っていった。…うん、やっぱり変だ。
シャルがニヤニヤしながら、俺達も行こうと言うのでついていく事にした。

「…なんね、読んでなかたか。読み進めるチャンスだたのに」

フェイがそう言うと名前は首を横にふった。
何の事だろうかと疑問に思ってる俺達とは違って、フェイは呆れたように鼻で笑った。

「馬鹿ね、このままじゃ負けるよ」

何の?とシャルが聞くと、速読勝負とフェイが答えた。
見るからに分厚い『世界の拷問百科』とその半分量の『人魚姫』。…やっぱり彼女はマゾなのかもしれないと悟った午後三時。



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