第一印象は儚いだった。
初めに見た彼女は雨に濡れて泥まみれ、それでもって綺麗だと思った。思わず見とれていたらクロロにパシらされたんだけど。



「そういえば、名前って下着変えてるの?」

別に下心があって聞いた訳じゃない(いや、多少なりともはあったけど)。しかし彼女はみるみるうちに顔を真っ赤にして目を泳がせはじめ、可愛いなーと思って見ていたらマチやシズク、パクたちに殴られた。
因みにシズクは彼女と今日知り合った様で、つい先程挨拶を済ませていた。他にもフランクリンやコル、ボノとも会えたみたい。…残るはアイツ一人だけど、あんまり会わせたくはないなあ。

「…で、どうなの?ちゃんと変えてるの?」

「………当たり前だろ。名前が来た次の日にあたしが適当に盗ってきた」

ついでに服も。と言うマチの言葉になーんだとがっかりしたら、また三人に殴られた。

「……ん?ということは名前は街に行ってないんだ」

「そうなんだ」

「シズクはともかく、シャルは知ってるだろ」

ずっとアジトにいたんだから、と言われてああそうかと納得していたら彼女に呆れられた。あれ、俺って結構しっかり者なキャラの筈だよね?

「……うん、なら名前。街に出てみたくない?」

今日いい天気だし。座っている彼女に目線を合わせて問う。名前は少し考えるフリをしてから俺に視線を戻して小さく頷いた。先程よりも若干表情が明るくなったと思うのは、自分の自惚れだろうか。

「よし、早速行こう!」

今の彼女の恰好は白のワンピースに黒のレギンス。街に行くのに大して着替えはいらないだろう。
立ち上がった彼女の手を取って出口に向かう。が、後ろからぶーぶーと非難の声が上がった。

「えー、シャルだけずるい。私も名前と街に行きたい」

「そうだよ。第一女の子同士でさえまだ一緒に行ったことないのに、男のあんたが許されると思うの?今日はあたしたちが一緒に行く」

「…それもそうね。シャル、今日は我慢しなさい」

「…………っ!」

女性陣の理不尽な要求に俺の怒りメーターは爆発。ここはどうしても譲れるか!

「っ何言ってんだよ!先に名前を誘ったのは俺!君達が何と言おうと俺は名前と二人で街に行くから!」

「シャル一人だけじゃ信用できない」

「うんうん。名前に何するかわかんないし」

「男は皆狼よ。名前、こっちに来なさい」

「…………」

名前は双方の間であたふたしていて、こんなときも呑気に可愛いなー、なんて考えてしまって。ああ、そんなことを考えている場合じゃないな、何としても名前の初外出は俺が手に入れてやる。
なんて思いながら目の前の女性陣を睨みつけていると、隣の彼女が俺の服をちょんちょんと引っ張ってきた。何かとそちらを見れば、名前はメモ用紙をこちらに差し出している。

"皆で行けばいいじゃないですか?"

……いや、二人で行くのに意味があって…という言葉は、薄笑いを浮かべながら首を傾げる彼女をみて咄嗟に飲み込んだ。



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