愛してる。
ずっとずっと、愛してる。

「正、臣…」
そうやって、呆然と見上げてくる大きくて綺麗な瞳が大好き。
その視界に俺だけが映り込めばいいのに、と何度思ったことか。
「帝人…」
床に仰向けで寝ている帝人の胸に耳を付ける。どくん、どくん、と生きている証が、俺の世界に響き渡った。

このまま帝人を殺せば、この心臓は俺のものになるのかな、なんて考えて、あまりにも馬鹿らしい考えに少し笑った。
殺したら物理的には手に入るかもしれない。

――けど、音がないのは嫌だなぁ。

俺は音ごと帝人の心臓を愛しているのだから。
いや、心臓ごと帝人を愛している、の方が正しい。
だって愛しているのは心臓だけじゃない。

「正、臣…」

再び名前を呼ばれる。そう、この声も大好き。心地よいテノールが俺の名前を呼ぶのは、どんな有名歌手が歌う歌よりも魅惑的だ。録音して、ずっと聴き続けたいくらい大好き。でも実際には録音なんかしない。機械なんかにこの甘美な旋律が再現できるはずがない。帝人の声帯が、咽喉が、音域が、全てが愛おしくて、唯一だ。

むくり、と頭を上げて帝人を見た。目が合う。大好きな大好きな、深い青。

殺したってそれは俺の大好きな帝人ではない。それは分かっていたけれど、瞳に映る俺を見ていたら、ほんの少しだけ、殺したいなぁと思った。

「みかど…、すきだよ…」

自分でも驚くくらい愛に濡れた、重くてどろどろとした声が空気を震わせた。

瞳に俺が映っている。

それを確認しながら、愛を一つ、落とした。







全部、全部、俺のものになればいいのに。



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