――どうしよう。

夜。部屋で一人、頭を抱えた。

――避けて、しまった。

別れ際の紀田くんの笑顔が少し寂しそうだったのは、見間違えではないはずだ。
避けるつもりなんてなかった。けれど、想いを自覚してしまえば、いつも通りに接するなんて不可能だ。紀田くんはスキンシップが激しいし、いつでも笑顔を見せてくれるし。
…いや、それは別に悪いことではない。紀田くんはいつだって僕を友人として好きでいてくれているだけだ。…僕が、そう思えないだけで。

取りあえず、謝ろう。ギクシャクした関係が続くのは、僕だって嫌だ。決して嫌われたい訳ではないのだから。
そう思い、携帯を手に取り、メール画面に文字を打ち込む。

[今日は、ごめんね]

しかし、この続きが、どうしても打てなかった。

避けている理由が、説明できない。

どう言えばいいんだ。それとも明日、普段通りに振る舞えば、なかったことにできるだろうか。
そう考えて、苦笑する。

なかったことになんか、できる訳がない。

明日、何事もなかったように振る舞うなんて、きっとできない。だって、


[好きだ]


好きだから。



なかったことになんか、最初からできる訳もなかったんだ。
できないなら、僕がすべきなのは謝罪ではなく。



僕は、メール画面を閉じた。





運命の歯車は加速する

もう止められない。止まらない。



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