嘘ばっかり 後/K新

「打たれたんだろ、だったら早く病院に…っ」

地上から俺の様子が見えたらしい名探偵の表情に、珍しく焦りの色が濃かった。
そんなに危惧する状況じゃないのに、どうしてそんな表情を。

もっと他に、どうして軌道をずらしたのに此処だとわかったのかだとか、
白馬だったら絶対パトカー数台引き連れてくるのにだとか、
言いたい事は沢山あったのだけれど、相手の顔を見たら何だか言えなくて。

「いいって…って名探偵、何してんの」

「止血が甘いんだよ、お前片手でやったのか」

止血が甘い、それにすら気付かなかった。言われて少し驚いた程。
ぶっちゃけさっきから涼しい顔をしているが、激痛に冷や汗が止まらない。
なんせ銃弾が体を打ち抜いた事なんて今まで無かったから。
そんなこんなで今名探偵が手厚く巻きなおしてくれている訳だが、
その時に白い衣装は脱がされて、上は青いワイシャツのみ。
シャツごしに伝わってくる名探偵の手があまりに冷たくて、
血が通ってないのでは、と心配になった。
そして止血が終わると何やら探偵バッチで誰かと通信。
…まさか、

「ああ、宜しくな灰原」

「…そのまさかか…」

よりによってあのお嬢さんか、怖ぇ。
そうぼやくと名探偵が病院は嫌なんだろ、贅沢言うな。
と言いながら俺に立てるか?と聞いてきて、
俺は軋む身体に鞭打ってポーカーフェイスで立ち上がる。
それを見た名探偵が、あからさまにはぁ、とため息を付きながら俺に肩を貸す。

「嘘ばっかり」

「え?」

名探偵の突然すぎる言葉に思わず瞠目する。
さっぱり何を言いたいのかがわかんねぇ。
そんな俺を無視するように名探偵は言葉を続ける。

「お前、さ…いつもそうやって、他人だけじゃなく、自分も欺いてんのか」

「…、…」

二人よろよろと歩きつつも、彼の言う"欺く"が、どういう意味だかはすっと理解できた。
俺のポーカーフェイス、について。という短絡的な意味じゃない事を。

「疲れる癖に、わかりやすいんだよお前」

「…そんなに顔に出てる?」

ちょっとショック、なんて乾いた声で笑ってみる。
しかしまぁ笑えない。自分では完璧に隠せていると思っていたのに。
そして今まで誰にも見破られた事は無かったのに。

「ばか、顔じゃねぇよ、空気だ空気。っつか、俺だって傷ついたんだからな」

ことごとく無視しやがって、と不満そうな名探偵に頭突きをされる。
いてぇ、何すんだよ、と反論すると「でも好きなんだ」と短い言葉が返ってくる。

思わず言葉を忘れそうになる程、胸が痛かった。


「新一、」

どうしようもなくて、なんとかしたくて、己の口が勝手に開く。
相手の名前を呼んで顔を近づけると、相手も目を細めて距離を詰めて来た。
少し赤らんだ頬、微笑を浮かべる口元がなんとも色っぽい。
目を細めながら、見つめ合う。

伝えまいと思ったこの気持ちを知っているのかいないのか。
どうやらこの無邪気に笑う名探偵に嘘は通じないらしいから、大人しく捕まっておこう。

「名探偵だって相当、わかりやすいぜ?」


嘘の日に出会い、俺の嘘を見抜くこの変な探偵に、
俺は相当入れ込んでいるらしい。


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終わります!初だしサイトタイトルをいれてみましたが、
関係があったのかないのか。
サイト名の由来は、やっぱり嘘ばっかりなこいつらの関係。
名探偵が「嘘ばっかり」っていっても可愛いし、
バ怪盗が「嘘ばっかり」っていっても可愛いやん!とおもったのが結果。
なぁ、おまいら結婚したらええやんか!
しかしコナンじゃないという…

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