恋愛恐怖症/緑青

ブルーが今、炊飯ジャーを抱えて俺の前にいる。
心なしかその手が震えていて、思わず抱き締めたい衝動に駆られたが、そこはぐっと堪えた。

「…俺、炊飯ジャーが好きだ…」

「…知ってる」

「…でも、本当は逃げてるだけなんだ…」

ブルーが告げた思いがけない言葉に、思わず瞠目する。
どういう意味だろう、と思って先を促すように相手を見つめる。

「俺、人相手に恋をするのが怖いんだ、…だから無機質なこいつを好きになって、それ以外は見ないように、自己暗示してたんだと思う…」

だってこいつが発情期って知って、ちょっと幻滅した自分がいたんだ、と目を伏せて告げるブルーのまつげに魅入る。長い。
そして何よりいつもはジャーへの愛ばかり紡ぐその唇が、ジャーを拒絶しているのだ。今は。
俺はそれを喜んでしまっている。

「…捨てないでほしいと思うのは、俺が逃げてるから…炊きたいと思うのは、俺が、他に縋るもんがなくなっちまうから…なんだ…はは、クールが聞いて呆れるよな…、」

苦笑を漏らす相手を衝動的にこの腕の中に抱き締める。
その拍子にびくりと震えたブルーが、ジャーを床にゴト、と落とした音がした。

「んなことない。もしお前が縋るもんがなくなっても、俺に縋ってくればいいだろ」

ブルーは恋愛をする相手が人じゃ怖いといっているのに、とか。こんな事をして怖がらせては、と思うのだけど…、
その反面、ブルーが俺を離そうとしない事に少しの安堵を感じていた。

「…、…でも、それじゃ俺、グリーンを好きになっちまう…」

ぎゅ、と俺の服を握って肩に額を押し付けられる。あああああ可愛いいいいい
じゃなかった、どうしよう、好きになってもらえるのか、これは。
もしかして、俺にも望み、あるのか?

「…好きになればいいだろ」

「…、…」

こいつが素直に俺の言葉を受け取れないのは、きっと裏切られるのが怖いのだ。
だってホームズもジャーも、動かないのだ。誰かが、ブルーが触って動かして、動くものだから。
絶対にブルーを裏切らないのだから。でもそれは、俺だって同じ。

「人を好きになるのが怖いって気持ち、俺が治してやるから、」

ブルーが俺の言葉の真偽を確かめるように、顔を上げてこちらを見つめてくる。
このブルーの不安をこれからは俺が拭っていってやらなければならない。
なんて楽しい日々だろう。

「これからはブルー専属のメカニックだな」

「…っ」

なんて笑ってみたら、顔を上げたブルーが頬を染めて胸に頭突きをかましてくる。
ああもう、なんでそんな可愛いんだお前は。
頬もすっかり緩みきって調子に乗った俺は、青い髪にちゅ、とキスをした。



***
夢でみた話!グリーンさん視点で、ひたすらブルーが可愛くて私が叫びそうになった。
(まあ叫んでたけど俺に隔たりをつくっていたグリーンさんに隙はナカッタ)
まじ、可愛いブルー。嫁にこい。

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