頂き物 | ナノ






答えが出ないことに対して、ただ考え続けるというのは中々苦痛を伴うものだ。答えが無い故のもどかしさや空虚。しかし、その裏で”答えが出るまでの楽しさ”を無限に味わえるという利点もある。つまりはある程度忍耐力があって、推理や憶測、果ては妄想が好きな人間にしか出来ない芸当だと思うのだ。
そう思うと、私は忍耐力のある人間なのだろう。


「ある物理学の博士は、人が恋に落ちるのは重力のせいじゃないと仰いましたが、ソネザキ博士はどう思いますか?」

「なんや突然、まず博士とちゃうしな」

目の前の白衣を羽織った青年は頬をかきながら笑いました。照れているのだろうか。確かに彼はまだ博士じゃないけれど、それも時間の問題だというのに。


「博士ー、質問に答えてください」

「せやかて、そないにメルヘンな質問、…身体かゆなるわアホ。しょーもない事言ってんと勉強した方がええんちゃうん」

「った」



マサキさんは軽く私の頭を叩いて自分の机に向かった。勉強、そうだ。私は確かに勉強を教えてもらうためにわざわざ郊外の岬まで自転車で来たのだ。しかし、うん、私の脳内はもう恋の落ち方にしか興味がないと訴えて聞かない。まあもしマサキさんが自身の考えを言ったとしても、こんなもの答えは無いのだからどうしようも無いけれど。
それでも気になるのだ。無駄に
このどうしようもない知的好奇心を多少なりとも満たして欲しい。そうだ。貴方には答える義務があるんじゃないですか?私の家庭教師(強制)でしょう?ねえ、スルーしないでくださいよ、寂しいじゃあないですか。



「ねえ、マサキさーん」

私は立ち上がってマサキさんを背後からヘッドロックした。
「痛っ、なにさらしとんねん!邪魔や!パソコン見えへんわボケ」

奮闘惜しくも
結局二発目を喰らって、渋々来客用のソファに戻る。


まったく、ヤクザか貴方は、野蛮ですよ。女子に向かってその言い方は無いでしょうマサキさん。




「アホとかボケとか...本当私に対してかなり辛辣ですよね」
「そないな事あれへんやろ、ええ扱いしとる方やで」
「どこが…質問にも答えてくださらないのに」


良い扱いなんてしてもらった覚えが無い。
私は毎日こんなに構って構ってと需要をアピールしているのに、貴方はいつも軽くあしらうだけじゃないですか。

睨んでいると、マサキさんがこちらに来た。今さら何だろう、先ほど私が解けずに放棄した方程式でもやってくれるのだろうか。有難いことだ。まあ一応家庭教師代としてお金出しているわけだし、当然か。忙しい彼に合わせなきゃいけないから、家庭教師というか私が彼の家に行って教えてもらっている形だけど。


来客用の革張りソファは背が低く、
そこに座る私の視線に合わせる為かマサキさんはしゃがんだ。



くいっと上がる口角が近い。



「しゃーないやっちゃなあ、ほな教えたるわ」
「何を?」





にわかに額へ感じた柔らかな感触。ご丁寧にリップ音を残したそれ、私を耳まで真っ赤にするのには十分過ぎた。




こいのおちかたー。と
舌を出した彼が憎い




「かかかからかわないでくださいよ、」
「勉強中に不真面目な質問してんのが悪いと思うけどなあ。…ほら、もうええやろ。ちゃっちゃと勉強勉強」





完全に子供扱いされてる。


「むかつく…」
「なんや、文句あるなら言うてみ」




なんだあの余裕な態度。これが大人というやつなら、私は絶対大人にはなりたくないと思う。


無性に悔しくなって「こんなんじゃ解りませんよ」と返せば






今度は口に噛み付かれたので

とうとう何も言えなくなってしまった。






End.



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AVERAGEの旬さまから相互記念として頂きました!
な、なんてかっこよすぎるマサキさん…!萌えが止まらなくてしばらく悶えてました(笑)これからどうかよろしくお願いします!
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