「…………ねえ、デンジこれはなんの嫌がらせ?」
家に帰ればぐちゃぐちゃになった洗濯物。ばらまかれた本たち。綺麗に整えていたはずの部屋はあきすにでもあったかのように汚れていた。 その様子をみてひくり、と口角をひきつらせるナマエをこの部屋を汚した犯人であるデンジは眠たげな顔でじっとみていた。
「……………」 「無視かい!」
ただでさえ最近忙しいのに!と怒りながらナマエは散らばったものを片付けていく。 せかせかと動いているナマエをデンジはぼーっと見つめていた。
「デンジも片付けてよ!ちらかしたのデンジなんだからー!」 「………ん」
気だるそうに返事をし、散らばった本を拾い始める。
こいつ本当にやる気ないな。というかなぜ無意味に部屋を汚した?あとでゆっくり聞いてやる。 そんなことをナマエは考えながら掃除に全力を注いだ。
「んで、デンジくん。なぜ私の部屋をあそこまでめちゃくちゃにしてくれたのかな?」 「……………」
片付けが終了し、一息ついてからナマエはデンジに尋ねた。 だがデンジは無言でぷい、とそっぽをむいてしまった。その様子はどこかふて腐れた子供のようである。 なんか様子がおかしいな、とナマエが考えていると今まで床に座っていたデンジが突然立ち上がった。
「……………」 「な、なによ」
無言で近づいてくるデンジにナマエはかなりの恐怖を覚えた。 身長の高いデンジが無言&無表情で迫ってくると、なんとも言えない圧迫間がある。 そのようすにしり込んでいると、背中に何か固いものの感触。ナマエは壁際へとおいやられていた。もう逃げ場はない。 するとナマエの頭の横にデンジはダン!と腕をついた。いまだに無表情のままである。
やばい、完全に怒ってる。私なにかしたっけ。
いろいろな発想をぐるぐる巡らせているとナマエの耳元にナマエは顔を寄せた。
「ナマエ」 「ひっ」
耳元で聞こえる低いテノールにナマエは思わず小さい悲鳴をあげた。 その悲鳴は恐怖というか耳元で話しかけられた羞恥の方が大きいようだった。その証拠に耳と顔が真っ赤である。
「おまえはオレの女だよな?」 「へ、あデンジ?」 「オレみたいなイケメンで強くてカッコいい彼氏がいたらお前も満足だよな?」
それを自分で言うか。 頭ではそう考えているのに口からはそんな言葉が出てこない。 だって、自分の口をデンジの口で塞がれてしまったから。
「む、う……!」
うわ、我ながらなんと色気のない声だろう。 そんなことを考えているとデンジは口をすぐに離した。
「なっななな」 「うわ顔真っ赤だな」 「う、るさい!」
思わずデンジをどかそうと手を伸ばした。だがその手はいとも簡単にデンジに捕まれてしまう。
「なあ、ナマエ」 「は…ぅい!」 「なんだよはぅいって」
軽く吹き出したデンジをみてナマエはさらに顔を赤くした。いまにも火が出そうなくらいに真っ赤な顔である。
「なにがしたいのよ!」 「最近おまえが忙しいのはわかってるんだ。………でも、もう少しでいいからオレにかまえよ」 「は………あ?」
また私はよくわからない声をあげてしまった。冷静になるためにもう一度デンジのいったことを反芻してみる。
「……デンジの様子がおかしかったのは寂しかったから?」 「ん」 「部屋をちらかしたのはかまってほしくて?」 「ん」 「だったら素直に言いなさいよ!」 「普通に《寂しい》っていってもつまんないだろ?だからさ」
ナマエをおもいっきり照れさせてやろうかと思って。
再び耳元で囁かれた言葉に、私は首まで真っ赤になってしまった。 こういう行為には耐性がないんだよ私は!!デンジはわかっててやってんだろうけど。
いじわる、大好き (20100616) |