悪ノパロ | ナノ
「王女様、失礼します」
「あらラムダ。遅かったじゃない」
「申し訳ありません。少々仕事が立て込んでおりまして」
「ちょっと、敬語で話すのはやめてって言ったでしょ」
「しかし、私は召し使いですし……」
「兄妹なんだからいいじゃないの」
「……ったく、かなわねーなナマエには」
「ほら、そっちの方がいいわよ」

 大きな部屋の中央でお茶を飲んでいた1人の少女はにこりと無邪気に笑った。いま俺が話しているのはこの国の王女であるナマエ。俺の腹違いの妹に当たる。俺は前王の妾から産まれた子、ナマエは正妻から産まれた由緒正しい王族だ。
 俺は本来ならあってはならない存在で、産まれた時点で殺されかねなかったのだが「父親を誰にも言わないこと」「召使として王女に仕えること」という条件で生かしてもらっている。
 ……まあ、おしゃべりな女中がナマエにしゃべってしまい、俺と兄妹であることがバレてしまったが。(その女中は王様に打ち首にされた)口は災いの元ってやつだ。
 まあナマエに知られたからといって俺の扱いが優遇されるわけでもない。だが俺はナマエの召し使いであることに誇りを持っている。
 俺は彼女のそばに入れるだけで幸せなんだ。

「今度のパーティの準備はどう?」
「あー予算が足りてねえな。王宮はかなりの赤字だぞ」
「あらそう。だったらまた税を上げなきゃね」

 さらりと増税するといって手に持っていた紅茶を優雅に飲むナマエ。そのしぐさからはとても少女には見えない。14歳にしてこの国の頂点となったナマエは他人の痛みを知らない。どれくらい民にとって増税が辛いことなのかも知らない。だが誰も逆らうことはできないし、逆らったら死刑にされてしまうので誰も反論しない。もちろん、俺も。

「わかったよ。んじゃ大臣の方に増税するって書類回しとくな」
「ねえラムダそれが終わったらもう一回わたしの部屋に来てよ! 遊びましょう!」
「はいはい。今日は何をやりたいんだ?」
「今日はじゃあ……ランスの変装やって!」
「大臣の? ……ったくしゃーねーな」
「ありがとうラムダ大好き!」

 これ以上ない嬉しい言葉に自然に顔がほころぶ。彼女はどこまでも純粋なのだ。やはり大人びているとはいっても、まだ遊びたがりな年頃だ。しかし一国の王女ともなれば普通に遊ぶことなどできやしない。だから俺といつも遊びたがる。彼女にとって俺はよい「遊び相手」だった。

「でもナマエにはすぐ見破られちまうしなあ。俺が変装して話しかけてもすぐにわかるじゃねぇか」
「泣きボクロさえ隠せばわからないわよ。どうしていっつも隠さないの?」
「いや、本気でやったら誰だかわからないだろう? あのホクロは俺が化けてるっていう証なの」
「んー……ラムダがいってることは時々よくわからないわ」
「わからなくっても平気だよ。んじゃ俺は大臣のところ行ってくるな」

 ひらひらと手を振ってナマエのいる部屋を後にした。

「ラムダ絶対遊びにきてね!」

 後ろからナマエの元気な声がする。姿は見えないがいまナマエがどのような表情をしているのかはすぐにわかった。いつもの花のようにかわいらしい笑顔をしているのだろう。
 その笑顔を見るたびにいつも思うのだ。



君を守るためならば
悪にだってなってやる
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