人畜有害取扱危険者 | ナノ
「では先ほどの書類にしっかり目を通しておいてくださいね」
「はいはい、言われなくても見ときます。引き受けたからにはちゃんとやる主義なんでね」

 先ほどの過程でばらけてしまった書類をまとめながら、シアンは適当な返事をする。「全く、いちいち返答が不愉快ですね」と彼女の横から声がして、再び不穏な空気が流れる。だがアポロはそんな事を気に止める様子もなく、むしろどこか楽しげにランスへと話しかけ始めた。

「ではランスを呼んだことについてですが、お前にも任務を頼みたいのです」
「……わかりました。内容はなんですか」

 ランスがそういうとアポロはにっこりと微笑み、書類の束を渡した。ランスはその書類を受け取り、視線を落とす。その瞬間、ランスは目を見開いて固まってしまった。
 少し震えた声がアポロへと投げられる。

「……アポロさん、渡すの間違えてませんか」
「いえ、間違えなくそれがお前に任せようと思った物ですが」

 すがるように問いかけたランスだったがばっさりと否定されてしまった。顔面蒼白になったランスを横目でみながら、にたあとシアンは邪悪な笑みを漏らす。

「なになに、そんなにひっどい任務まかされたの?」

 この日一番の愉快そうな顔を浮かべ、シアンは固まっているランスの手から書類を奪い取った。そして奪った書類を覗き込むと、シアンも先ほどのランスのように固まってしまった。そしてひくひくと痙攣する口角がゆっくりと動き始める。

「あ、あれー……? アポロさん、渡す書類間違えてません?」
「だから間違えてないと言っているじゃないですか。最初にいったでしょう、《ランスは部外者じゃない》とね」
「…………!」

 少しだけ眉間にしわを寄せてアポロは答えた。シアンはぱくぱくと口を動かすことしかできなくなっている。そしてアポロは現実が受け止められず完全に思考が停止している彼らに向かって、ゆっくりと眼差しを向けた。そして、有名な美術品のような美しい笑顔を浮かべ、彼らに容赦なくとどめをさす。

「お前たち2人には取引先の社長が主催するパーティーに参加してもらいます。相手方に失礼のないように、パーティーに行っても仲良くしてくださいね」

 その言葉は、まるで死刑宣告のように響いた。冷えきった空気の中に時計の針の音が響く。
 はめられたと彼らが気づいたときには、既に狡猾な獣に咀嚼されてしまっていたのだった。





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2人とも散々大口叩いているため逃げ場はない
 (20110407)


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