人畜有害取扱危険者 | ナノ
 あの女について、警告を兼ねて少しだけ話しておこうと思う。

 所属しているのはアテナの隊、職種は研究員。アテナのことを非常に慕っている。単独行動を好み、部屋や研究室に籠っていることが多い。そのため新参の団員はあの女の名は知っていても顔を見たことがないというものがほとんどだ。手持ちはノーマルタイプのみ。私と同期であり、サカキ様が解散宣言をする数年前に入団した。おおまかな情報はこんなところだ。ただ絶対に忘れてほしくないことがある。

 あの女の性格は酷く歪んでいるということだ。

 とんでもなく自己中で、世界の中心は自分であると思っている部類の人間だ。この組織にいる理由もアテナに従う意味もわからない。研究員には奇人変人が多いが、あの女はそのなかでも抜きん出ていると思う。何をするにも飄々として理論がましい。しかもその理論は大抵の人間は理解ができないようなあの女の持論に沿ったものである。それを世界共通の法だとでも言わんばかりに話すので聞いている側としてはたまったものではない。ようするに話すと腹が立つ。吐き気がする。バトルなどの戦法は、ロケット団としては適切なのかもしれないが卑怯以外の何物でもない。卑怯というより外道という言葉のほうがしっくりくる。性格のが関係して団内でも悪名高く、会ったことのないしたっぱたちにも知られているというわけだ。
 そして会話をするうえでの特徴として、人間を動物へと比喩することがとてつもなく多い。あの女は"獣"という分類で呼んでいた。幹部たちや数名の下っ端たちにもその比喩を使用している。例える事もあれば例えないこともある。理由はおそらく、気分的な問題だろう。あの女自身は、よく猫にたとえられていた。そしてその表現は的を得ているように思う。どうしようもなくあの女は猫だった。気まぐれ、頑固、自己中心的。私にとっては不幸を運ぶ黒猫だ。車にでもひかれてしまえばいい。
 そしてここまで言えば気が付いてくれたとは思うが、私はあの女が嫌いだ。心の底から殺してやりたいと思う。そしておそらく、いや確実にあの女も同じだ。
 奴とかかわって殺されかけたことも何度でもある。殺そうとして失敗したことも何度だってある。私たちは入団当初から敵対関係にあるのだ。何年もその状態が続いている。相手を自分の足元にひれ伏させることを互いに夢に見ているのだ。
 ああ、そういえば私とあの女の名をあげることを忘れていた。あの女の名など本音を言えば口にしたくもないのだが、仕方がない。

 私の名はランス。あの女の名はシアンという。害の塊の名称だ、覚えておくといいだろう。


人畜有害...人にも獣にも害を与えること。造語。
 (20110403)


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