Love is a leveller | ナノ
 とあるアジトとあるの一室。中では酷く重苦しい雰囲気を纏い、幹部たちによる会議が開かれていた。だがその中には緑髪の幹部の姿は見えない。三人の幹部はなにか重大な事を考えているようで口を開く様子はなかった。そして長い沈黙に終止符を打ったのは青髪幹部の言葉だった。

「では改めて聞きます、ランスを真面目に働かせる案はありますか」
「それがねぇからこんなことになってんだって」
「最近忙しくなってきてるしランスにも前以上に働いてもらわなきゃ、きついのよね……」

 三人のため息が会議室に飽和する。
 最近では復活に向けて本格的な活動を始めているためロケット団全体に焦りが浮かんできていた。仕事の効率を上げるために幹部が率先して働くのは当然とも言えることであったのだが、この話の種であるランスはそんなことを理解していないかのように依然として理解不能な行動を続けていた。この会議はそれに危機感を抱いた幹部たちが開いたものなのである。

「いっそしたっぱに降格するとかどうだ?」
「それは無理です、ランスは何だかんだいって実力がある。したっぱたちからの信頼も彼に勝るものはいないでしょう」
「信頼は俺の努力ゆえじゃねえか……」
「本気出せばやれるのに出さないからたちが悪いわよね」
「あとこのシリーズの人気的な意味でも却下です」
「それは言っちゃ駄目だろ」

 話はまとまる様子を見せずに時間だけが進んでいく。しばらくしてから赤髪幹部が眉間にシワを寄せながらポツリと呟いた。

「……あれ使う?」
「おいアテナあれは試作段階だって言ってたじゃねえか、早すぎるだろ!」
「いま使わずにいつ使うのだ」
「おかしいなある映画の女殿下のセリフと被ってる気がするぞ」
「話の腰を折るようで申し訳ないのですが……あれ、とは?」

 青髪幹部の一言に残りの2名は顔を見合わせる。そして片方はにやりと笑い、もう片方はやれやれとため息をついた。

「知らないんだったら見せてあげるわよ」
「……俺様はもうしらんぞ」
「?」
「じゃあ行くわよ」
「どこへです?」
「決まってるじゃない、ランスのところよ。ラムダ、ランスにあったら援護よろしくね」
「……ちなみに拒否権は?」
「あるわけないでしょ」

 赤は楽しげにそういうと、素早く立ち上がり重苦しかった会議室を出た。その後に続くのは苦笑いを浮かべた紫と、いまだに状況が理解できていない青だった。


* * *


 しばらく3人でアジト内を散策していると彼らが捜していたランス自販機の前で真夏なのにもかかわらずあたたかい飲み物を大量購入していたのが目に入った。

「なにしてるんですかランスは……」
「いちいちあいつの行動に突っ込んでたらキリないから諦めろ」
「さてラムダ、用意はいい?」
「はいはい」

 アテナがラムダに話を振ると即座にラムダはランスの近くへと寄って行った。

「あれ、ラムダさんどうしたんですか? よく見れば皆さんお揃いで……」
「……悪いなランス、覚悟しろ!」
「は」

 ラムダは素早くランスの後ろに回り込むとがば、と羽交い絞めにする。ランスが身動きが取れなくなったその刹那、アテナがランスのみぞおちを思いっきり殴り上げた。ものすごい力で殴られたランスは体を海老のような状態にし、膝をついた。

「っ……! ……いじめ、かっこわる……い」

 と、小さく呻いてランスはがくりと失神した。殴られて気を失うことになっても最後までボケを続ける彼の熱意には呆れるのを通り越して賞賛するに値するだろう。

「はいランス確保」
「……南無三」
「ちょっと2人とも何やってんですか!」
「いや、こうしないと逃げちゃうかなって」
「ランスが目を覚ます前にさっさと済ませようぜ」
「あなた方が腐っても悪の組織の人間だと改めて確認しましたよ……」
「それは仮にもボス代理が言えることではないと思うぞ」

 アポロとラムダがそんな会話をしてる間にアテナは懐から小さなケースを取り出す。その中に入っているのは小さな注射器であった。中には不思議な色をした液体が入っている。

「腕出させて」
「はいはい」
「何なんですその注射……」
「研究班のほうで最近開発中の性格を好みに変える薬の改良版よ」
「本来は人間に使うためのものじゃねぇんだがな……」
「それ大丈夫なんですか」
「……………」
「……………」
「ちょっと!?」
「まぁなるようになれ、よ」

 アテナはそういうとランスの腕に注射を荒々しくさした。失神したままのランスは全く反応を示さない。

「さて、これでランスが少しくらいまともになってくれるといいんだけど……」
「後は運次第だな」
「まさかの運任せ!? これ以上ひどくなったらどうしたらいいんですか!」
「……なんか今回ボケとツッコミ逆転してない?」
「ラムダ? 仕事放棄ですか?」
「ツッコミだってボケたい時もあるんだよ」

 そんなことを話していると、ジュースを買いに来たのかマゼンタが自販機の前へとやってきた。

「幹部の皆様こんなところで何……ってうわランス様!?」
「ちょうどいいところに来たわねマゼンタ、ランスを部屋に運んで行って頂戴」
「えっアテナ様が他人の心配をするだなんて……明日は空から破壊光線が降ってくるんじゃ」
「なんだその想像」
「……お前はランスの部下でしょう、運んでやりなさい」
「よくわからないですけど、わかりました! あ、ランス様今日のノルマもこなしてませんけど」
「これで一週間分滞納ですか……」
「別にいいわよ。早く行きなさい」
「はーい」

 マゼンタは軽く返事をしてランスの腕をつかみずるようにして引き返していった。

「見つかったのが馬鹿でよかったわね、マゼンタなら余計な勘ぐりはしないでしょう」
「そういやアテナ、あの薬の効果はいつぐらいに出るんだ?」
「大体ランスが眼を覚ますくらいに出てくるかしら、切れる時間もよくわからないのよね」
「どんだけ運任せなんですか!」

 このとき一向は気がついていなかった。この薬がのちに非常にめんどくさい自体を引き起こすことには。

 (20100902)
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