Love is a leveller | ナノ
 今ロケット団アジトのとある一室では、険悪なムードが醸し出されている。その原因となっている青と紫の幹部は大変くだらないことに精を出していた。


「お前何言ってんだよ、夏といえば海だろ。男は黙って海行くだろ」
「はっ、馬鹿馬鹿しい。夏の醍醐味と言えば山に決まっているではありませんか」


 彼らの話の種は《今年の慰安旅行はどこにいくか》というものだった。
 そのプランをたてていた2人が海か山かで喧嘩をしてしまっている、という状況が先程からずっと続いている。

 正直それを聞いているマゼンタは「どちらでもいい」そう思った。こういうのを50歩100歩、もしくは目くそ鼻くそを笑うというのだろうか。


「ただでさえ暑いのに海という日差しの申し子みたいなところに行くだなんて気が狂っているとしか思えませんね」
「寒い時に海行ったって意味ねーだろうが。山なんてなんか魅力あんのかよ。蚊が大量発生する地獄じゃねーか」
「そっちなんてクラゲとか大量発生してるじゃないですか」


 今までその口論をただぼーっと見ていたマゼンタだったが、それに飽きてしまったのか、別の場所で真剣にブリッジをしていたランスのもとへと移動してしまった。彼がなぜ今ブリッジをしているのかは不明である。
 一方アテナは我関せずといった様子で爪の手入れをしていた。彼女の手が美しいのはその日々行っている努力のたまものなのだろう。


「なぁお前らは海と山どっちに行きたい?もちろん海だよな」
「なにをいってるんです、山に決まってるでしょう」

 突然口論をしていたはずの2人がその他の人間に意見を求めてきた。え、と気の抜けたような返事をマゼンタはしてしまう。


「アポロ様とラムダ様がお決めになるはずでは……?」
「このドガース厨が意見を変えないので」
「このMハゲが意見を変えねえから」
「……多数決をすると」
「まあ簡単にいえば」
「そういうことですね」


 真剣なまなざしで自分たちの方を向く彼らを見てマゼンタは小さくため息をついた。
 まだブリッジを続けているせいで顔を真っ赤にしているランスに、話にはいるように促すとランスはブリッジした状態からいきなり歩き始めたのでマゼンタは悲鳴をあげた。
 その様子を見ていた2人が不快感をあらわにしていたので、マゼンタは気を取り直して質問に答えた。


「うーん、わたしはどちらかっていうと海のほうが好きですね」
「ちっ……裏切り者が」
「好み言っただけで裏切り者扱い!?」
「ランスはどうだ?お前も海だろ?」
「どっちかっていうと……う「山だったら給料10%アップ」山大好きです」
「アポロてめえそういうのを職権乱用っていうんだよ!!」
「ずるいです給料が上がるならわたしだって山がいいです!」
「ふざけんなお前海派だろ!」
「じゃあこれで二対二ですか……アテナ、お前はどちらがいいですか」


 アポロは已然として会話に興味を示さないアテナに声をかける。
 んー、とアテナは気の抜けた返事をし――


「あたくしどっちでもいいわ」
「アテナ様のの一言ですべてが決まるんです、どうかこの不毛な戦いに終止符を!」
「海だよな!」
「山ですよね」
「そうねぇ……」


 アテナはあごに手を当て少し考えるしぐさをし、マゼンタの言う《不毛な戦い》に終止符を打った。


「どちらか決められないなら両方行けばいいじゃない。はい決定」
「え」
「は」


 まるで何世紀か前の女王のようなセリフを行ったアテナに、ぽかんと開いた口がふさがらないアポロとラムダ。だがそれに相対するかのようにマゼンタは「いいアイディアですねアテナ様、そうしましょう!!」と楽しげに、ランスは「サボれるならどこでもいいです」と最低なことをいった。

 彼らの意に反し「じゃあきまりね」といった現ロケット団の女王の決断に文句をつけることなど、呆然とするしかない2名にはできるはずもなかった。したところで結果なぞわかりきっているのだから。


「2ヶ所いくとなると……経費足りませんよ」
「なにいってるの。あなた最近財布が暖かいそうじゃない、というわけで払え」
「そんな……!」
「なんかいったか」
「……………いえ」
「アポロ………半分払うぞ?」
「ありがとう、ございます……」

女帝最強。
 (2010726)
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