短編小説 | ナノ
※流血表現あり、夢主が危ない人



―――――早く、逃げなくては
―――――あれのいないところへ
ランスは走っていた。
 一心不乱に走り続けた。後ろから来る"モノ"から逃げるために。
ランスの体はすでにボロボロで着ている服は破け、ところどころ血が吹き出していた。

「くっ……」

貧血から起こるめまいとふらつきに耐えながら、ランスは足を止めることなく走り続けた。

「はっ……はっ……」

肩で息をしながらランスは近くの木の影に隠れる。
どうしてこうなったのだろう
焦点のあわない目でぼんやりとそんなことを考えていた。

「みーつけた」
「!」

目の前に来た少女、ナマエによってその答えは出されることはなかった。
 ランスが逃げ出すより早く、ナマエは手に持っていたナイフでランスの首にぴたりと狙いを定める。

「ランスさんはずいぶんと逃げ足が速いんですね……ますます好きになっちゃいましたよ」
「はっ……あなたに好かれたおぼえはありませんけど」
「あははーひどいなぁもう」

 笑いながらナマエはランスの手に手のナイフを突き立てた。

「ッ……!」
「あれー? ランスさん悲鳴あげてくれないんですか?」


 ぐりぐりと手に刺さるナイフをさらに押しつけられる。とてつもない激痛が手のこうを貫いた。

「う、ぐっああああ!」
「ふふっ、素敵な悲鳴ですね」

 目の前のナマエはとても愉快そうな笑みをうかげながらそう言った。

「あ……なたは! 何がしたいんです!」

 持てる力のすべてを振り絞ってランスは叫んだ。するとキョトンとした表情のナマエが見える。

「わからないんですか?」
「わかるわけ、ないでしょう………が」

 もう、もたない。
 わたしが激痛と貧血でふっと意識を手放す瞬間に、

「愛してるから壊したいんです。誰にも渡さない。あなたのすべてをわたしだけのものにしてあげます。さてと、もっともっと楽しみたいですし……」

まだ逝かないでくださいね?
 というナマエの言葉と、これ以上ないかわいらしい笑みを浮かべた顔を見たような気がした。





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