短編小説 | ナノ
※ラジオ塔で敗北して捕まる
※だいぶ冷酷なランス



「どこの町にもわたしたちに逆らう奴はいるのですねえ……」

 くつくつと目の前の緑色はとても楽し気に笑う。
 這いつくばるわたしを見下ろしながら緑色の髪の男――ランスは嘲るように言った。

「あなたのような子供が我々の野望を止めようだなんて浅はかにも程があります。身の程を知りなさい」
「三年前は他の子供に野望止められたくせに」
「……よく回る口ですね」

 ランスは少し目を歪ませながらわたしの腹に蹴りを入れた。
 狙ったのだろうか、その蹴りはきれいに鳩尾に食い込む。

「がっ……」
「あなた名前はナマエ、と言いましたっけ?」

 声色は優しいのにもかかわらず、ランスはわたしの体を蹴ることをやめない。

「先ほども言いましたよね? 身の程を知りなさい、と」
「ぐ…ぁ……」

 ぐい、と髪を引っ張られ顔をあげられ、そのまま頬を殴られた。
 両手を拘束されているわたしは力の法則に抗えずどしゃりと床に崩れ落ちる。
 その状態でギッ、とランスを睨み付ける。

「おや? まだ生意気な目ができますか」
「ラジオ塔を占拠なんか絶対うまくいかないんだから!」
「ほう……その自信はどこから来るのでしょうねぇ」
「わたしは駄目だったけど……ゴールドが……ゴールドが絶対あなたたちロケット団を再び解散させてくれる!」
「他人任せですか。まああなたも我々を潰す気だったのでしょうが」

 こんな状態じゃ、無理ですものね。
 と、ランスはどこまでも冷たい視線をナマエに向け続ける。

「まあ、わたしもずっとあなたと遊んでいられるほど暇ではないので」

 ランスはそういうと一度部屋から出ていってしまった。
 やっとどこかにいってくれた。ナマエが安心したのもつかの間、5分くらいしたらすぐにランスは戻ってきた。

「ナマエ。あなたに良い知らせがあります」
「なに……暇じゃないんじゃなかったの?」
「黙って聞きなさい。あなたが先ほどいっていた……、ゴールドといいましたっけ。その少年がラジオ塔に乗り込んできましたよ」
「!」

 思わずナマエは目を見開いてランスを見た。彼ならこの組織を潰してくれる――そんな期待に満ちた表情をナマエはする。

「それで、ゴールドは」

 身を乗り出してランスに話しかけるナマエにランスは無言で《何か》を放りつけた。 その《何か》にナマエは視線を向けそして絶句した。
 なぜならばランスが放りつけたのは、べっとりと血のついたゴールドの帽子だった。血の跡だけでなく、焦げ目や切り傷もある。その様子を見る限り帽子の持ち主は、無事では――

「……ゴールド、は」
「ご想像にお任せします。まあ、その帽子を見ればわかりません?」
「そん、な」
「これであなたの希望は終わり。次にそうなるのはあなたです」

 我々に逆らったことを死んでからで後悔なさい。
 そう楽し気に嘲笑うランスをナマエは焦点の合わなくなった目でぼんやりと見ていた。





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