短編小説 | ナノ
 今日はわたしにとって大切な日だ。いままでずっと帰れなかった故郷に久しぶりに帰れる日。いまはナギサシティ行きの船の中で懐かしいナギサの街並みを思い出しながら船の甲板で海風を全身に浴びていた。

「楽しみだな……」

 誰に言うわけでもなくそうわたしは呟いた。そしてナギサの船置き場に着くとあいたいとおもっていた懐かしい人たちのシェルエットがみえた。

「おーいナマエ!」
「オーバ! デンジ! 久しぶり!」

 そこにいたのは私の幼馴染である赤いアフロのオーバと、黄色いツンツン頭のデンジがいた。

「ひっさしぶりだなぁナマエ!」
「うわ、オーバもデンジも全然変わってないね」
「あれだぞ。こいつは頭の弱さも昔っからかわってねえ」
「デンジてめえ! お前だってそんなに変わってねえじゃねえか!」
「黙れ」

 デンジがオーバにミドルキックをいれると、「ぐえっ」とこえをあげてオーバが倒れた。
 ああ、懐かしい。
 久しぶりに会った二人は全然変わっていなかった。こんな感じでずっと長い間過ごしてたんだ。そんなことを思い、胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じた。

「ギャウ!」
「ぎゃう!」
「わ、久しぶり!」

 すり寄ってくる2匹を抱きかかえるようにして私は久々のスキンシップをとった。オーバとデンジのポケモンのブースターとサンダース。私たちはパートナーとなるポケモンを3人お揃いであるイーブイをもらった。そのイーブイをオーバはブースターに、デンジはサンダースに進化させた。

「よし、エーフィー出ておいで!」

 腰につけていたボールを投げるとわたしのパートナーであるエーフィーが出てくる。わたしはイーブイをエーフィーへと進化させた。最初はシャワーズに進化させようと思ったけど、そしたらサンダースと相性最悪になっちゃうからやめにした。

「フィー」
「ぎゃう!」
「ギャウ!」

 3匹が懐かしそうに身を寄せ合う。なんだかわたしたち3人を見ているようでほのぼのとした気持ちになった。そして3匹に抱きついて毛皮のふかふかさを堪能していると、なんだか冷めた目でこちらを見ているオーバとデンジがいた。そしてそこに2人が割り込んでくる。

「おまえらちょっとそこ変われ」
「落ちつけデンジ。俺が変わる」
「なに2人もふかふかを堪能したいの?」

 はい。とエーフィーたちを差し出すと、2人とも微妙な表情をされた。

「おまえもほんとに変わってないよな……」

 と、声を合わせて言われてしまった。「そんなことない!」と反論するとやれやれといった風にデンジが話題をそらした。

「こんなところで話をするのもあれだから俺の家行くぞ」

 そういえばそうだった。ここはまだ港。ほかの人の迷惑になる場所だった。

「そっかーデンジも周りのこと気にするぐらいに成長したんだね」
「いやこいつはジムの改造で街中を停電させたりして」
「だまれくそアフロ」
「がはっ!」

 何かを言いかけたオーバのみぞおちにデンジの肘鉄がさく裂した。

「オーバなんかいった?」
「ナマエ気にするな空耳だ。早く家行くぞ」

 後ろで屍となっているオーバを無視するように
デンジはそそくさと行ってしまった。


* * *


「でもさ、人も変わるよねー今じゃデンジはジムリーダー、オーバは四天王だもん。強くなっちゃってさ」

今わたしたちはデンジの家にみんなでお邪魔してコーヒーをご馳走になっている。わたしがそういうとふたりは少し顔をしかめてこう言った。

「何いってんだよ、ジョウトチャンピオンの癖に」
「俺たちよりナマエの方が強いだろう?」
「そんなことないと思うんだけどなー」
「というかオレたちがナマエに勝てたことあったか」
「それを言うなデンジ悲しくなるだろ」

わたしはジョウトで旅をしていた。そしてジムを制覇し、ジョウト地方のチャンピオンにまで登り詰めた。今まで帰ってこれなかったのもそのせいだ。

「そういやあナマエ、チャンピオンの仕事はいいのか?」
「ああ今は仕事を全部前のチャンピオンのワタルって人に押し付けてるからいいんだ。平気平気」
「うわ何だよお前ニートになったのか」
「公式ニートが言える台詞じゃねえよ」
「黙れ耐水性アフロ」

わたしの入れない話題を持ち出してまた喧嘩が始まった。よくあきないなあと思い、ボール外に出しておいたエーフィー達に目をやる。

「あ、ブースターがエーフィーにアタックしてる」
「は?」
「ん?」

わたしたちが見ている先にはエーフィーに小さな花をあげているブースターの姿があった。エーフィーはそれを嬉しそうに受けとる。

「エーフィーも鈍感だよねえ。昔っから2匹に好かれてるのに気づかないんだもん」
「……ポケモンは持ち主に似るってほんとなんだな」
「……そうだな」
「2人ともなんか言った?」
「なんもいってねえよ」
「お、よっしゃがんばれブースター!」

オーバの熱い声援をうけて「ぎゃう!」と声をあげたブースターだったが、

「ギャウ!」

ブースターにロケット頭突きをしたサンダースによってブースターはエーフィーから離された。

「よくやったぞサンダース。もっとやれ」
「デンジてめえ!」

ブースターが吹っ飛ばされて、少々ぽかんとしているエーフィーにサンダースがに近づき、毛繕いを始めた。

「今度はサンダースが優勢みたいだね」
「流石オレのポケモンだな」
「ああああ! ブースター負けんな!」

そしてすぐに体制を立て直したブースターがサンダースに反撃を始ようとする。そこでにらみ会う2匹と2人。

「いい機会だ久しぶりにバトルするかオーバ。電撃で黒炭にしてやる。ナマエにこれ以上ない醜態を晒せ」
「上等だぁ! デンジお前を真っ白な灰にしてやる! 表に出やがれ!」
「なんでポケモン同士の喧嘩にトレーナーが出てくのよ!」

わたしの叫びも空しく、2人は外に出ていってしまう。急いで2人についてわたしとエーフィーも外に出る。

「いっつもこうなんだから……ねえエーフィー」

そう言いながら走ってようやくデンジとオーバに追い付く。2人共足が長いから追い付くのが大変だった。

「どこ向かってるの?」
「オレのジム。おもいっきりやるにはあそこしかねえしな」
「そんなに本気出すんだ!?」
「いいかナマエ、男には譲れない熱い戦いがあるんだよ」
「オーバはいつも熱いじゃん」
「というか暑苦しいな」
「お前ら酷くないか」

そう会話をしながらわたしたちはデンジのジムについた。

「そういえば昔っから2人が戦うと勝ったり負けたりだったよね」
「今はオレの方が強いけどな」
「何いってんだよデンジ! 俺の方が強いに決まってんだろ!」
「うざいのは髪型だけにしろドナ○ド」
「この野郎お決まりのネタをぉぉ!」

ぎゃーぎゃー騒ぎながらジムの中に3人で入っていった。まったくいつまでも子供なんだから。見た目は立派な大人なのに……

「じゃあ審判はわたしがやるね」
「絶対負けねえからな! 行けブースター!」
「それはこっちのセリフだ。頼むぞサンダース」





残念ですが
終わりは全く見えません

 (前サイトから)

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