わたしはジンさんの背中でへばっていた。
「うー…ぐらぐら…ぐるぐる…する……」
「おい、今吐いたら殺す」
「……理性で耐えてる」
とあるパーティーにジンさんと参加してたんだけど、お酒と人に酔ってしまい途中で抜け出し、ホテルの廊下を歩いていた。
始めは何とか自力で歩いていたわたしだったけど、どうにも足がおぼつかない様子だったようで、見兼ねたジンさんがおんぶをしてくれて、今の状態になる。
「部屋に戻ったら、水を飲め」
「……うん」
ジンさんの肩にのせていた腕を首に巻きつけた。
「どうした?」
「ううん。ただ、ジンさんの背中あったかいなぁって」
ジンさんのぬくもりに幸せを感じ、その背中に顔をうずめた。
「そうか」
「ジンさん、ありがとう」
そう言って首に回す腕の力を少し強める。
「……フン」
顔は見えないけど、ジンさんの素直じゃない返事が聞こえた。
部屋に着くと、ジンさんにそっとベッドへ寝かせられた。
ふかふかのベッドに、肌触りのいいさらさらなシーツが心地いい。
「水持ってきてやる」
そう言ってジンさんが、わたしの傍を離れようとするから、思わず服の袖を掴んでしまった。
「茜……?」
「……ここに、いて」
傍にいてほしい。
今は離れたくない。そんな思いを込めて、ジンさんを見つめた。
すると、ジンさんは近くに椅子を持ってきて座って、手をそっと握ってくれたんだけど。
「いっしょに寝てくれないの…?」
なんだか、広いベッドに一人は寂しい。
「お前に…危機感はねぇのか」
「……だめ?」
呆れたジンさんは、ため息をつく。
それでもわたしはジンさんを見る。
「……そんな目で見るな。襲われてぇのか」
そんなことを言いながら、ジンさんはベッドに横になる。
「頭上げろ」
言われた通り、頭を上げるとジンさんの腕がするりと、頭の下に敷かれた。
所謂、腕枕だ。
「うで、しびれない?」
「お前の頭は軽いからな」
「それ、褒めてないよね」
「さぁな。
もう、寝ろ」
ジンさんは、わたしの頭を撫でる。
「ジンさん…」
「なんだ」
「……おやすみ」
そう言って目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。
茜はガキみてぇな寝顔をする。
「文句は聞かねぇからな」
茜の紅い唇に、俺は自らの唇を重ねた。
これぐらいの報酬は貰わねぇとな。
無防備に眠りこけるお前を腕に抱き、俺も一時の安らぎに身を任せる。
起きた時のお前の反応が楽しみだ。
おわり。